朱徳熙

朱徳熙の生涯と業績

朱徳熙（しゅ とくき、1920年10月24日 - 1992年7月19日）は、中国の著名な言語学者であり、現代中国語文法の第一人者として知られています。彼は1920年に蘇州で生まれ、若い頃から学問に対する強い興味を持っていました。

学歴とキャリアの初期

朱徳熙は1939年に日中戦争の最中、昆明にある西南連合大学に入学しました。当初は物理学を学んでいましたが、唐蘭教授の古文字学の講義を聴いて深い興味を抱くようになり、翌年には中文系に転科しました。在学中、李栄とともに学びながら、1945年に大学を卒業しました。卒業後は、すぐに清華大学の中文系で副教授として勤めることになりました。

海外経験と帰国後の活動

中華人民共和国が成立した後の1952年から1955年にかけて、朱徳熙はブルガリアのソフィア大学で中国語を教えました。この経験は、彼の国際的な視点を豊かにし、その後の研究や教育に大きな影響を与えました。帰国後は北京大学で長期間にわたって教鞭を執り、多くの学生に指導を行いました。

晩年と最期

1989年にアメリカに渡った朱徳熙は、その後1992年にカリフォルニア州スタンフォード大学病院で亡くなりました。彼は1945年から中国民主同盟に属し、その活動にも関与していました。

主要な著作

朱徳熙はたくさんの本を著し、特に現代中国語文法に関しての重要な論文が集められた『現代漢語語法研究』（1980）で広く知られています。邦訳もあり、松村文芳及び杉村博文による『現代中国語文法研究』（白帝社、1988）でも彼の理論が紹介されています。

彼の研究で特に注目されるのは、「現代漢語形容詞研究」（1956）と「説“的”」（1961）です。前者では、中国語の形容詞の重ね型の異なる用法を明らかにし、後者では「虚字」と呼ばれる「de」の三つの異なる形を分析しています。朱徳熙のアプローチは、従来の文法解析に埋もれていた意味を持ち込む偏向を避け、言語の分布に基づいた明快な分析に重点を置きました。

彼の著作『語法講義』（1982）は、1960年代に行われた北京大学での講義をもとにしたもので、多くの学生に愛されています。さらに、近年では『語法叢稿』（1990）に彼の以前の論文が集められており、多様な文法理論が論じられています。

また、教育的な書物として『文法のはなし』（1986）もあり、現代中国語文法に関する複雑な問題を対話形式で分かりやすく解説しています。この他にも、朱徳熙は古文字学の研究を続け、裘錫圭との共同研究を含め、多くの論文を発表しています。

没後の評価

朱徳熙の影響は現在でも語られており、彼の死後に発表された論文や著作は、多くの言語学者にとって重要な参考資料となっています。代表的な文集には、『朱徳熙古文字論集』（1995）、『朱徳熙文集』（1999年に5冊）、そして『朱徳熙選集』（2001年）などがあります。彼の業績は、現代中国語学の発展に多大な寄与を果たしました。

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