朱貴

朱貴（しゅ き） - 『水滸伝』の登場人物

朱貴は、中国の古典小説『水滸伝』に登場するキャラクターの一人で、梁山泊の好漢の中でも特に重要な役回りを果たしています。彼は第九十二位の好漢であり、地囚星の生まれ変わりとして描かれています。彼の渾名は「旱地忽律」（かんちこつりつ）であり、その意味は陸のワニを指しています。この渾名は、彼が背の高い細身の体躯を持ち、顎鬚と口髭を蓄えた洒落た外見からきているのでしょう。

朱貴は梁山泊において長い間活動しており、王倫が首領の時代から古参のメンバーとして存在感を示していました。彼は梁山泊の対岸に自ら居酒屋を開き、見張りや情報収集、人材のスカウト、さらには入山希望者の面接などの役割を担っていました。こうした業務を通じて、彼は梁山泊の運営に深く関与していたのです。

生涯を探る

朱貴の生まれは沂州沂水県で、居酒屋を営む家に生まれ育ちました。彼のビジネスセンスは早くから発揮されており、弟の朱富に家を任せて各地を渡り歩き商売に専念していました。しかし、元手を失ってしまった結果、彼は再び梁山泊へと戻る決意をします。

特に印象的なエピソードとして、柴進の推薦で梁山泊入りを希望する林冲が訪ねてきた際の出来事があります。朱貴は林冲を首領の王倫の元へ案内しますが、王倫は彼の実力を恐れ、様々な理由をつけて追い返そうとしました。しかし、朱貴は真っ先に反対し、副首領の宋万や杜遷もその意見に賛同したため、王倫はしぶしぶながらも林冲を受け入れることになりました。

その後、官憲の追及を逃れた晁蓋たち七人の好漢が入山を求めて訪れました。当初は王倫が彼らの入山を拒否しましたが、林冲の激怒によるクーデターが発生し、王倫は斬殺され、晁蓋が新たな頭領に据えられることになりました。朱貴はもともと王倫に不満を抱いていたため、喜んで晁蓋に従い、見張り役を続けます。

一年後、江州の役人で軍師呉用の友人である戴宗に痺れ薬を盛る事件が発生します。意図せずそのような事態を招いてしまった朱貴は、慌てて介抱し、晁蓋の恩人である宋江が無実の罪で処刑されかけていることを知り、これを報告しました。これによって、晁蓋たちは無事宋江を救出することに成功します。

同じく沂州出身の李逵が母親を迎えに行く際には、朱貴が目付け役として同行しますが、李逵が官憲に捕まる事件が発生しました。この時、朱貴は弟の朱富と共に李逵を救出し、護送役人の李雲を梁山泊へと連れ戻すことに成功します。

その後も朱貴は、彼の居酒屋で商売を続けつつ、脱獄した雷横やその母の保護を行ったり、芒碭山の樊瑞一味による襲撃計画を察知するなど、梁山泊に重要な貢献をしてきました。

生涯の終わり

百八星が集結した後、朱貴の相方は杜興に代わり、居酒屋も南に移ります。彼は「朝廷に帰順する」という決断を下し、梁山泊を離れる準備を進めながら物語の表舞台から姿を消していきました。また、方臘討伐戦の際に杭州で流行した疫病にかかり、命を落とすこととなります。朱貴は『水滸伝』という壮大な物語の中で、重要な役割を果たした人物の一人として、その名を刻んでいるのです。

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