朱鷺の墓

『朱鷺の墓』

五木寛之による小説『朱鷺の墓』は、日露戦争を背景にした壮大な物語です。この作品は、1968年から1976年にかけて『婦人画報』で連載され、全4章から成り立っています。物語は、金沢の花街で生まれ育った美しい芸妓・染乃と、ロシアの貴族出身の青年将校イワーノフの激しくも運命的な恋愛を描写しています。物語は、戦争という激動の時代の中で、愛がどのように試練に遭い、また復活するかを描く感動的なストーリーです。

内容の概要

空笛の章

この章では、5歳で金沢の花街に売られた染乃が登場します。彼女は日露戦争の捕虜たちへの慰問活動を行う職業に従事していましたが、その最中、戦争で家族を失った民衆に襲われます。その時、捕虜であったロシア人貴族アレクサンドル・イワーノフに救われ、彼との運命的な出会いが待ち受けています。彼女はイワーノフと結婚しますが、戦争の終結後に彼がロシアへ帰国してしまう。染乃はその間に他の都市の赤線地域に売られるが、幼馴染の機一郎に助けられ、逃げることができます。

風花の章

ウラジオストクで自由になった染乃は、ナホトカの中華料理店で働きながら、イワーノフを探す日々を送りました。彼女は、テロリストとして流刑にされたイワーノフと再会し、彼を助け出します。ふたりは再び生活を共にするためにウラジオへ戻りますが、十月革命という歴史的な激動も乗り越えながら、ノルウェー船でペトログラードへ向かう決断をします。

愛怨の章

ペトログラードでは、イワーノフは妹ナターシャと再会しますが、彼の両親はブルガリアに逃げており、ナターシャは反革命派のスパイとなっていました。ブルガリアを目指す彼らは様々な困難に直面しながらも、祖国を探し続けますが、手がかりが見つからず、ついにはウィーン、プラハ、パリなどを転々とし、逃避行の果てに日本へと戻ることになります。

流水の章

物語の終息にあたるこの章では、金沢で穏やかな日常を過ごす染乃とイワーノフ。しかし、シベリア出兵を迎えた日本軍からの圧力や迫害が徐々に二人を追い詰めます。最終的にイワーノフが亡くなる中、染乃は再びシベリア行きの船に乗る決断を下します。この物語は、愛と運命に翻弄される女の強さを描いた感動的な結末を迎えます。

メディア展開

この小説は、テレビドラマや演劇、漫画にもなって広く親しまれています。1970年と1973年に放送されたテレビドラマ版は、各々異なるキャストによって物語が再現され、視聴者に感動を与えました。また、1979年には宝塚歌劇団によって舞台化され、さらには漫画としても展開されています。

『朱鷺の墓』は、歴史的背景に基づきつつ、とても人間味ある恋愛物語であり、多くの人々に愛され続けている作品です。

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