杉の柩

杉の柩

『杉の柩』（原題：Sad Cypress）は、イギリスの著名な小説家アガサ・クリスティによる、エルキュール・ポアロシリーズの長編推理小説です。本作は1940年に発表され、婚約者を毒入りのサンドウィッチで殺害したという容疑で逮捕された女性の物語を中心に展開します。この作品では、主人公であるポアロが真実を追い求め、その中で様々な人間模様が描かれています。

あらすじ

物語はエリノア・カーライルとロディー・ウェルマンの婚約から始まります。彼らは大富豪の叔母ローラ・ウェルマンから遺産を受け取ろうと計画していましたが、そこに匿名の手紙が届き、彼らの企みが知られてしまいます。その手紙の主は、叔母に仕える門番の娘メアリイ・ジェラードではないかと疑念が生じますが、エリノアはその正体を突き止められず、手紙を燃やしてしまいます。

エリノアとロディーはローラを訪れるが、そこで呼び出されたのは彼女の主治医ピーター・ロードとエリノアです。ローラは脳卒中により半身不随となり、医師に健康でない生活から解放してほしいと望みますが、ピーターはそれを拒みます。その後、ロディーはメアリイと恋に落ちることになり、エリノアとの婚約を破棄します。ローラは二度目の脳卒中で亡くなり、エリノアが相続する事に。しかし、彼女にはメアリイへの贈与を考える余裕がありました。

エリノアが相続した家を売却した矢先、メアリイがモルヒネ中毒で死んでしまいます。この出来事でエリノアは殺人の容疑をかけられ、逮捕されてしまいます。メアリイの死が明らかになるにつれて、彼女の出生に秘められた秘密が燻っています。さらに、彼女の死因であるモルヒネ中毒も、ウェルマン夫人が同じ死因で亡くなっていたことを示唆していました。正義を求めるピーターはポアロに調査を依頼し、ポアロは村人に聞き取り調査を行います。彼は、エリノアの無実を信じ、真実を追求し始めます。

複雑な人間関係

ポアロは、エリノアが作ったサンドウィッチに毒が入っていたのか、看護婦ホプキンズが入れた紅茶にあったのか調査を進め、疑問を抱くことになります。メアリイに隠された出生の秘密、ホプキンズの手首の傷に施されたバラの棘の影響など、様々な伏線があり、真実を解明するための手がかりになります。結局、ポアロが集めた証拠と証人の証言に基づき、法廷での展開が明らかになっていきます。

緊張の法廷

裁判が進む中で、破れた薬品ラベルが注目され、実は催吐剤であるアポモルヒネのラベルであることが判明します。この情報により、ホプキンズが紅茶に毒を入れ、自ら催吐剤を用いて自分の体から毒を取り除こうとしたことが明らかになります。動機は金銭であり、メアリイはウェルマン夫人の隠し子だったのです。彼女が早く出生の秘密を公にしていれば、遺産を相続できたはずなのにと、ホプキンズの計画が露見することになります。

エリノアは無罪となり、ポアロの活躍が評価される一方、ロディーではなくピーターが彼女に寄り添う未来が待っていることが示唆されます。真実が明らかになることで、エリノアの人生がどう変わっていくのか、ポアロの推理がどのように人々の運命を変えるのか、心に残るストーリーです。

結論

『杉の柩』は、アガサ・クリスティの作品の中でも特に深い人間関係と緊迫感に満ちた物語であり、エルキュール・ポアロの魅力が引き立つ作品です。謎が解き明かされる瞬間は読者を惹きつけ、結末に至るまでの道のりが一層のスリルを提供します。

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