杉下右京の密室

『杉下右京の密室』（すぎしたうきょうのみっしつ、The locked room mysteries of UKYO SUGISHITA ）は、碇卯人による日本の推理小説です。

概要

テレビ朝日の人気ドラマ『相棒』シリーズのノベライズを手がける碇卯人によるオリジナル小説の第3弾です。本作には、「大富豪の挑戦状」と「壁」の2編が収録されており、どちらの物語も密室事件が重要な要素となっています。

「壁」の物語は、時間軸としてはseason10とseason11の間に位置づけられています。杉下右京の2代目相棒である神戸尊が警察庁へ異動した後で、3代目相棒の甲斐享が右京と出会う前の出来事として描かれています。

大富豪の挑戦状

杉下右京は、大学時代の知人である高松啓文から、沖縄の無人島での新居落成式と早期退職パーティーに招待されます。宮古島近くの久部良島に到着した右京は、高松からある相談を持ちかけられます。高松は、社長退任前に自身の社長室に盗聴器が仕掛けられ、会社の経営情報が外部に漏洩していたことに気づき、その犯人が今回のパーティー参加者の中にいると疑っていました。高松は、参加者それぞれが情報漏洩の動機を持っていることを明かし、犯人に自首を促す一方で、右京に純粋な推理で犯人を当てるよう挑発します。高松は、犯人の指紋が付着した盗聴器と、ディナーで使用したワイングラスの指紋を照合することで犯人を特定できると宣言し、右京に12時間以内に犯人を推理するよう告げ、自身は地階の海中展望室に閉じこもります。

しかし翌朝、高松は海中展望室で刺殺体として発見されます。右京の調べにより、現場は内側から出る事が不可能な密室状態であることが判明します。果たして右京は、この複雑な密室殺人の謎を解き明かすことができるのでしょうか。

登場人物

杉下右京（すぎしたうきょう）：警視庁特命係の警部。
高松啓文（たかまつひろふみ）：右京の東京大学時代の知人で、半導体関係のベンチャー企業「セミコンZ」の社長。
小柳津聡（おやいづさとし）：高松の個人秘書。
杠丈太郎（ゆずりはじょうたろう）：セミコンZの経理担当取締役。
苫篠寛（とましのゆたか）：セミコンZの社長。
上垣外恵理（かみがいとえり）：セミコンZの専務。
石川卓（いしかわすぐる）：セミコンZの取締役。
高松春美（たかまつはるみ）：高松の妻。
荒俣俊（あらまたしゅん）：高松邸を設計した建築家。
八田淑江（はったよしえ）：高松邸のハウスキーパー。
金城直（きんじょうただし）：高松邸のコック。

壁

アウトドアスポーツ用品を扱う「アウトドアドリーム社」の秘書室勤務の倉科麻子は、副社長の依頼で屋上のクライミングジムの鍵を開けに行きます。そこで彼女は、腐乱した状態の遺体を発見します。遺体の状況から、亡くなった人物は8日前からアメリカに出張中の社長・渡潤一郎である可能性が浮上します。捜査一課は、渡がボルダリング中に転落死した事故であると結論づけようとしますが、杉下右京はいくつかの不審な点に気づきます。遺体の腰にチョークバッグがなく、手のひらにチョークの痕跡がないこと、また、通常は安全のために施錠しないクライミングジムを、渡がわざわざ鍵をかけていた理由が見当たらないことなどから、右京は事件性を疑います。現場は、直径5センチ程度の小さな天窓があるのみで、密室状態でした。ドアのサムターン錠も通常より固く、糸を使ったトリックも不可能でした。右京は、事故に見せかけた密室殺人の謎に挑みます。

登場人物

杉下右京（すぎしたうきょう）：警視庁特命係警部。
米沢守（よねざわまもる）：警視庁刑事部鑑識課員。
伊丹憲一（いたみけんいち）/ 三浦信輔（みうらしんすけ）/ 芹沢慶二（せりざわけいじ）：警視庁刑事部捜査一課の刑事トリオ。
渡潤一郎（わたりじゅんいちろう）：アウトドアドリーム社の社長。フリークライミングが趣味。
倉科麻子（くらしなあさこ）：アウトドアドリーム社社長秘書。
三条良雄（さんじょうよしお）：アウトドアドリーム社総務部勤務で、麻子の恋人。
篠山融（しのやまとおる）：アウトドアドリーム社副社長。
渡朋代（わたりともよ）：渡の妻。
渡邦子（わたりくにこ）：朋代の母。認知症を患っている。
松金穣（まつがねみのり）：ワタリビルの西隣の住人。
松金環（まつがねかん）：穣の息子。
* 西連寺翔（さいれんじしょう）：ステルス探偵事務所所長。

この小説は、緻密なトリックと複雑な人間関係が絡み合う、本格的なミステリーとして読者を楽しませてくれるでしょう。杉下右京の卓越した推理力が、読者を事件の真相へと導きます。

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