杉井ギサブロー

杉井ギサブロー：アニメーションの軌跡と情熱

杉井ギサブロー（すぎい ギサブロー、本名：杉井儀三郎、1940年8月20日 - ）は、日本のアニメ界に多大な貢献を果たした巨匠です。数々の名作アニメの監督・脚本を務め、独自の作風で多くのファンを魅了してきました。その生涯と作品世界を紐解きます。

静岡からアニメーションへの道

静岡県沼津市出身の杉井氏は、幼少期から漫画に親しみ、小学校時代には「マンガ少年」として過ごしました。転機は、沼津で観たディズニー映画『バンビ』。その感動的な映像に心を奪われ、アニメーションを生涯の仕事にしようと決意します。

東京へ移り住んだ杉井氏は、アニメーターになる具体的な方法が分からず、漫画家を目指してうしおそうじ氏に弟子入り。建築物の正確な描写に惹かれたことがきっかけでした。高校には進学せず、アルバイトをしながら画塾に通い、技術を磨いていきます。

東映動画時代と独立

17歳で東映動画（現・東映アニメーション）に入社。長編アニメーション『白蛇伝』に参加しますが、原画家への道を断念。その後も『少年猿飛佐助』『西遊記』などの作品に参加するものの、労働組合運動への馴染めなさなどから1961年に退社。

その後、手塚治虫率いる虫プロダクションに入社。『鉄腕アトム』制作に参加し、リミテッドアニメーションの手法に衝撃を受けつつ、演出家として頭角を現します。出崎統氏らと共にアートフレッシュを設立後、グループ・タックを設立し、『ルパン三世』パイロットフィルムの制作にも携わりました。

放浪と『タッチ』の大成功

1974年、『まんが日本昔ばなし』の制作に関わった後、杉井氏は放浪の旅に出ます。「アニメを生業としていいのか」という葛藤からの出発でした。旅先では絵を売って生計を立てつつも、『まんが日本昔ばなし』の絵コンテなどを手がけました。

1983年、あだち充氏の作品『ナイン』のアニメ化をきっかけに本格復帰。そして1985年から開始した『タッチ』は、空前の大ヒットを記録し、日本アニメ大賞アトム賞を受賞しました。

独自の作風と映画哲学

杉井氏の作風は、30歳を境に変化を遂げました。初期は演出家の意図を忠実に再現することに重点を置いていましたが、その後は、制作現場のスタッフとの協働を重視するようになりました。脚本や絵コンテはあくまでも「仮」であり、制作現場の熱気を反映させることで、より生きた作品が生まれると考えています。

杉井氏は、娯楽映画の重要性を強く主張。作り手の真剣さが熱気を生み出し、観客を魅了する作品を生むと語ります。また、ゲーム原作映画においては、ゲームをプレイした感覚と同様の爽快感を観客に与えることを重視しています。

自身の作品についても、「後へ残す映画」と「残さない映画」の両方を手がけてきたと分析。例えば『銀河鉄道の夜』は観終わった後も考え続ける作品であり、『ストリートファイターII MOVIE』は爽快な娯楽作品として位置付けています。アニメーションに質感を付与するために音の効果を重視するなど、独自の表現方法を追求し続けています。

功績と評価

杉井ギサブロー氏の作品は、多くのアニメーターや監督に影響を与え、日本のアニメーション史に大きな足跡を残しています。富野由悠季氏からは、類まれな才能と本能的なアニメーションへの理解を高く評価されています。

まとめ

杉井ギサブロー氏は、自身の葛藤や経験、そしてアニメーションへの揺るぎない情熱を作品に注ぎ込み続けました。その作品群は、時代を超えて多くの人々を感動させ続けています。彼の功績は、これからも日本のアニメ界に輝き続けるでしょう。

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