杉沢台遺跡

杉沢台遺跡：縄文から平安へ、時を超えた人々の営み

秋田県能代市磐字杉沢台に位置する杉沢台遺跡は、縄文時代前期から平安時代にかけての複合遺跡であり、その歴史的価値から国の史跡に指定されています。日本海から約3.3キロメートル、米代川下流域の標高約35メートルの東雲台地北側に位置し、米代川の支流である竹生川に接しています。この地は、JR五能線北能代駅の東方約1kmに位置します。

遺跡は、縄文時代前期を中心とする大規模な集落跡で、その範囲は35,000平方メートルに及びます。1980年（昭和55年）に秋田県教育委員会が4,672平方メートルの範囲で発掘調査を実施し、2003年（平成15年）からは能代市教育委員会が発掘調査を行いました。これらの調査の結果、縄文時代、弥生時代、平安時代の遺構・遺物が多数検出され、史跡周辺にも集落が広がっていたことが明らかになりました。

特に注目されるのは、長径31～16メートルの大型建物跡4棟を含む44軒の竪穴建物跡と、食料を保存するための109基のフラスコ状土坑（貯蔵穴）です。フラスコ状の貯蔵穴は、底径と高さが2メートル程度のものが多く、中には貝殻が捨てられていたものもありました。また、円筒下層式土器も出土しています。

台地の最も高い場所にある、小判型で長径が31メートル、面積222平方メートルにも及ぶ日本最大級の超大型建物は、この遺跡のハイライトと言えるでしょう。この大型建物は中央を境に柱の並び方が異なっており、何らかの役割の違いがあったのではないかと推測されています。柱穴の重複関係から、少なくとも3回は建て替えが行われたと考えられています。集落の中心部にこのような大型建物が位置していることは、当時の人々の生活様式を知る上で重要な手がかりとなります。

また、2018年（平成30年）には、この地で出土した縄文前期の磨製石斧が、北海道日高地方の「アオトラ石」であることが判明しました。これは、当時の交易を示す貴重な証拠となります。能代市内では数少ない弥生時代の遺跡である杉沢野遺跡が杉沢台遺跡の南に位置しており、周囲には金ヶ沢など製鉄を連想させる地名があることも興味深い点です。

1981年（昭和56年）9月3日には、3,714.79平方メートルの範囲が国の史跡に指定されました。

出土品から探る当時の生活

杉沢台遺跡からは、石器類として石錘や石匙が多数出土しています。網漁に用いられる石錘は、2個の切目を持った切目石錘が多く、石匙は縦型のものが目立ちます。出土した縄文土器は筒形の円筒下層式土器で、内面に焦げがあるなど、煮炊きに使われた形跡が見られます。

さらに、縄文前期の磨製石斧2点が発見されており、鑑定の結果、これらの石斧が北海道日高地方にしかない緑色岩の一種である「アオトラ石」で作られていることが判明しました。この事実は、当時の交易範囲や技術交流を示す重要な発見であり、近隣の能代市朴瀬にある古館1遺跡でもアオトラ石の塊が発見されており、この地域では交易によって入手した石材で石斧を作っていた可能性があります。

杉沢台遺跡は、縄文時代から平安時代にかけての複合遺跡として、当時の人々の生活、文化、交易を知る上で貴重な情報を提供してくれる、重要な史跡です。

参考文献：
* 『能代市埋蔵文化財調査報告書第17集 杉沢台遺跡』

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