杉田愉

杉田 愉（すぎた さとる）

日本の映画監督および脚本家であり、新潟産業大学の客員講師も務める。

来歴と人物

1974年（昭和49年）10月29日、新潟県柏崎市に生まれる。地元の柏崎市立第二中学校、新潟県立柏崎高等学校を経て、中央大学文学部哲学科を卒業した。

映画の世界に進むきっかけの一つとなったのは、シナリオでの高い評価である。2003年には、第3回伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞で『貝ノ耳』が大賞を受賞。同年、第9回函館港イルミナシオン映画祭シナリオ大賞でも『空の私と私の空』が準グランプリに輝き、映画界からの注目を集めた。

これらの成功を受けて、2004年に自身の脚本に基づいた『貝ノ耳』で長編初監督を果たす。主演に鰐淵晴子、坂井昌三を迎えたこの作品は、国内外で絶賛された。特にヴロツワフ国際映画祭では、審査委員長を務めたアンジェイ・ズラウスキーから最優秀剣士賞が授与される快挙を達成。この作品は数多くの国際映画祭に招待され、初監督作品としては異例の、グランプリを含む合計10もの賞を獲得するという輝かしいスタートを切った。

その後も、独自のスタイルを追求した作品を発表し続ける。2006年の『キユミの肘 サユルの膝』（主演：品田涼花、丸山桃子）は、リスボン国際映画祭で日本人監督として初めてRTPオンダ・クルタ賞を受賞。2009年には『花に無理をさせる』（主演：丸山桃子、富永りつ子、品田涼花、甲斐真弓）がサンクトペテルブルク国際映画祭でワールドプレミア上映され、モナコ国際映画祭では出演者の丸山桃子が最優秀助演女優賞を受賞するという成果を上げた。

2010年に発表された『キユミの詩集 サユルの刺繍』（主演：丸山桃子、品田涼花）は、アカデミー賞公認のウエスカ国際映画祭やモントリオール・ヌーヴォ国際映画祭を含む世界26カ国の50を超える映画祭で招待上映されるなど、国際的な評価をさらに高めた。この作品は、現在までに合計12の賞を獲得している。

杉田監督の作品は、その独特の作風が際立っている。台詞がほとんどなく、わずかなモノローグがあるのみである点が特徴だ。また、四季折々の風景を取り込み、原色が鮮やかに映し出される映像は、しばしば映像詩と称される。さらに、初監督作以外ではプロの俳優を起用せず、「今後は女性のみを被写体として撮り続ける」と公言するなど、非常に特異な作家性を確立している。国際映画祭のコンペティション部門における受賞率の高さも、彼の才能を示す顕著な点である。

監督作品

『貝ノ耳』（2004年）
『キユミの肘 サユルの膝』（2006年）
『花に無理をさせる』（2009年）
『キユミの詩集 サユルの刺繍』（2010年）

主な受賞・上映歴

特に国際的な評価の高い『キユミの詩集 サユルの刺繍』を中心に、主要な受賞・上映歴は以下の通り。

『キユミの詩集 サユルの刺繍』

受賞歴:
第56回シネ・ゴールデン・イーグル・アワード（アメリカ） 金鷲賞
第44回ヒューストン国際映画祭（アメリカ） 金賞（ゴールド・レミ・アワード賞）
第38回バイーア国際映画祭（ブラジル） 銀犰狳賞
第21回映画祭TAMA CINEMA FORUM 第12回TAMA NEW WAVEコンペティション（日本） 特別賞
第19回サンティアゴ国際短編映画祭（チリ） 最優秀撮影賞
第6回ハリウッド・リール・インディペンデント映画祭（アメリカ） 最優秀実験映画賞
第5回プルヴィカーダル国際記録短編映画祭（ボスニア・ヘルツェゴビナ） 最高賞グランプリ
主な上映歴:
第64回サレルノ国際映画祭（イタリア）
第64回カンヌ国際映画祭（フランス）
第40回モントリオール・ヌーヴォ国際映画祭（カナダ）
第39回ウエスカ国際映画祭（スペイン）
第85回キネマ旬報ベストテン2011（日本） 文化映画第28位

『花に無理をさせる』

受賞歴:
第8回モナコ国際映画祭（モナコ公国） 最優秀助演女優賞（丸山桃子）
主な上映歴:
第18回サンクトペテルブルク国際映画祭（ロシア）
第18回ダマスカス国際映画祭（シリア）

『キユミの肘 サユルの膝』

受賞歴:
第4回リスボン国際映画祭（ポルトガル） RTPオンダ・クルタ賞
第49回ロチェスター国際映画祭（アメリカ） 審査員奨励賞
主な上映歴:
第26回ルイ・ヴィトン・ハワイ国際映画祭（アメリカ）
第10回上海国際映画祭（中国）

『貝ノ耳』

受賞歴:
ヴロツワフ国際映画祭（ポーランド） 最優秀剣士賞
パープルバイオレット映画祭（アメリカ） 最高賞グランプリ
アトランタ・アンダーグラウンド映画祭（アメリカ） 最高賞グランプリ
かわさきデジタルショートフィルムフェスティバル（日本） 優秀賞
プロボカートル国際映画祭（チェコ） 審査員特別賞
主な上映歴:
第62回ベネチア国際映画祭（イタリア）
第22回ボゴタ国際映画祭（コロンビア）
* 第21回イメージフォーラムフェスティバル（日本）

国内外で高く評価される、独自の芸術性を持った映画監督である。

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