李叔正

李叔正（り しゅくせい、1318年 - 1381年）は、明代の学者であり官僚です。字は克正、もとの名は宗頤といいました。隆興府靖安県（現在の江西省靖安県）の出身です。

生涯

李叔正は幼い頃から才能を発揮し、12歳で詩作ができるほどの才能を持っていました。成長するにつれて、その博識ぶりはますます広く知られるようになりました。当時、江西には十才子と呼ばれる才能ある人物たちがいましたが、李叔正はその一人に数えられました。

その才能が認められ、李叔正は国子学正（国立大学の教官）に推薦されました。1370年（洪武3年）に一度辞職して故郷に帰りますが、翌年には再び推薦を受けて学正となり、その後、渭南県丞（県知事の補佐役）に転任しました。

渭南県では、隣接する同州蒲城県との間で土地の境界をめぐる争いが起きていましたが、両者間で解決の糸口が見つからない状態でした。陝西省は李叔正にこの紛争の解決を委ね、彼は単身で現地に赴き、わずかな言葉で事態を解析し、解決策を提示しました。これにより、長年くすぶっていた土地問題は解決へと導かれました。

また、渭南県では、毎年2万石の食糧が運ばれていましたが、豪族や官吏が不正を働いていたため、農地が適正に評価されていませんでした。そこで、李叔正は検地測量を実施し、税制の不正を正しました。彼の法治は精密で、数々の弊害が取り除かれ、県政は大きく改善されました。

その後、李叔正は淳化知県（県知事）に転任します。程なくして、北京に召還され、礼部員外郎（礼部次官補佐）に任命されました。高齢を理由に帰休を願い出ますが、許されず、国子助教（国立大学の助教授）に転任しました。

当時の洪武帝は、文治に力を入れており、国子学の人材育成に熱心でした。しかし、国子学の学生たちは身分が高い者が多く、教導に従おうとしない者が多かったため、李叔正は厳格な規則を定め、朝夕に正座して、学生たちの学習を監督し、怠慢を許しませんでした。その厳正な姿勢は、学生たちの規律を正す上で大きな役割を果たしました。

李叔正の功績は皇帝の耳にも届き、監察御史（監察官）に抜擢され、洪武帝の命を受けて嶺表（現在の広東・広西地方）を巡察しました。巡察中、瓊州府（海南島）の官吏が、知府（府知事）が公座に署名文を敷いていたと告発する事件が起きました。李叔正はこの件を徹底的に調査し、知府の潔白を明らかにし、告発した官吏こそが罪を犯していることを暴きました。洪武帝は、李叔正の明晰な判断力を称賛しました。

1380年（洪武13年）、李叔正は礼部左侍郎（礼部次官）に昇進し、翌1381年（洪武14年）1月には礼部尚書（礼部大臣）にまで上り詰めました。

同年7月、日本国王良懐が僧の如瑤らを派遣して、献上品や馬匹を献上しました。しかし、李叔正は洪武帝の命を受け、その貢物を突き返し、如瑤らを厳しく譴責しました。この外交的な対応からも、李叔正の強い信念が伺えます。

李叔正は、その直後、在官のまま亡くなりました。享年は64歳でした。

李叔正の妻の夏氏は、陳友諒が南昌を陥落させた際、井戸に身を投げて自害しました。李叔正は終生再婚することはありませんでした。李叔正は、その生涯を通じて、公正で清廉な人物として、人々に尊敬されました。

脚注

『明史』巻137 列伝第25に李叔正の伝記が収録されています。

参考文献

『明史』巻137 列伝第25

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