李完九

李完九（イ・ワング）の生涯と政治キャリア

李完九（イ・ワング、이완구、1950年6月2日 - 2021年10月14日）は、韓国の政治家であり、元国務総理（首相に相当）、元忠清南道知事、そして第15・16・19代の国会議員を務めました。朴槿恵大統領の側近としても知られ、セヌリ党の院内代表も務めた人物です。

生い立ちと初期のキャリア

1950年、忠清南道青陽郡で生まれた李完九は、成均館大学校とミシガン州立大学大学院を卒業後、1974年に行政高等試験に合格し、経済企画院（現在の企画財政部）の事務官としてキャリアをスタートさせました。徴兵では、舟状骨の副骨の障害を理由に補充役となりましたが、その後、忠北地方警察庁長や忠南地方警察庁長などを歴任し、経済と治安分野での能力を発揮しました。

国会議員としての活動

1996年には、新韓国党から第15代総選挙に出馬し初当選を果たし、2期8年間国会議員を務めました。2006年には第35代忠清南道知事に当選しますが、李明博大統領による世宗特別自治市計画の縮小に反発し、2009年に知事を辞任しました。この出来事が、当時ハンナラ党内で李明博と対立していた朴槿恵との信頼関係を築くきっかけになったとされています。2012年の大統領選挙では、朴槿恵陣営の忠清南道選挙対策委員長として活躍し、朴槿恵の当選に貢献しました。

2013年には補欠選挙で国政に復帰し、2014年にはセヌリ党の院内代表に選出されました。親朴槿恵派に分類される一方で、野党との関係も良好で、幅広い人脈を持つ人物として評価されています。

国務総理への就任と辞任

2015年1月、李完九は鄭烘原国務総理の後任として指名され、大統領に苦言と直言をする国務総理になると抱負を語りました。しかし、任命同意案の採決では与党からも造反者が出るなど混乱がありましたが、最終的には可決され、2月17日に国務総理に就任しました。しかし、就任からわずか2ヶ月後、建設会社会長による不正資金提供疑惑が浮上し、その責任を取る形で国務総理を辞任しました。

その後の活動

贈収賄事件については、2017年に無罪が確定しており、その後は政治的な再起を目指していたとされています。晩年は血液のがんを患い闘病生活を送り、2021年10月14日に71歳でその生涯を閉じました。

疑惑

土地投機疑惑と兵役に関する疑惑

李完九は、国務総理に就任する際、兵役に関する疑惑が浮上しました。過去には、舟状骨の副骨の障害を理由に早期転役したとの報道がありましたが、実際には満期で兵役を終えていました。さらに、次男の入営延期についても疑惑の目が向けられましたが、所属していたセヌリ党はこれらの疑惑を否定しました。また、土地投機疑惑、高級マンションの財産記載漏れ、論文盗用など、数々の疑惑が浮上しました。

2015年2月10日からの国会人事聴聞会では、李完九が報道機関に圧力をかけたとされる音声テープが公開され、李自身も謝罪に追い込まれました。さらに、忠清南道知事在任中に実弟が贈収賄事件を起こしていたことも発覚しました。

不正資金疑惑

李完九は、建設会社会長の成完鍾による不正資金提供疑惑にも巻き込まれました。「成完鍾リスト」には李完九の名前も記載されており、当初は金銭の授受を否定しましたが、成完鍾の生前の録音で、2013年の再選挙時に3000万ウォンを渡したと証言されたことで、一転して疑惑の対象となりました。最終的に、李完九は国務総理を辞任することになりました。裁判では、一審で懲役8ヶ月、執行猶予2年の判決が下されましたが、控訴審で無罪となり、最高裁判所も二審判決を支持し、無罪が確定しました。

日本との関わり

2015年4月の記者会見で、李完九は日本に対して強い批判を展開しました。竹島問題、日本軍慰安婦問題、古代史歪曲など、日本の歴史認識について厳しく非難し、歴史的事実を直視するよう求めました。また、日本の文化庁がウェブサイトで、日本が所蔵する遺物に「任那時代」という説明を付けていることについても「歴史歪曲は民族魂を否定するものだ」と批判しました。さらに、「日本の起源は百済」であると主張し、「日本王室の起源が百済であることを恐れて、日本は正倉院を開けない」と述べました。

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