李恢成

李恢成（り かいせい）について

李恢成は1935年2月26日に生まれた韓国の小説家であり、樺太真岡郡真岡町出身です。彼の人生は戦争や移民の苦しみと共に形成され、その経験は多くの作品に受け継がれています。1945年の日本の敗戦後、彼の家族は日本人引揚者とともに樺太を脱出し、長崎県大村市の収容所へ向かいました。しかし、朝鮮に帰還する試みは実現せず、最終的には札幌市に住むことになります。この時、彼は樺太に姉を残しており、これは彼の作品においてトラウマとして表現されることになります。

李は北海道札幌西高等学校を卒業後、早稲田大学第一文学部露文科へ進学します。大学では留学生運動に積極的に参加し、卒業後は朝鮮語での創作を目指しましたが、思うようにはいきませんでした。その後、日本語に方向転換し、朝鮮総連中央教育部や朝鮮新報の記者として働いた後、1972年には『砧をうつ女』で日本文壇初の外国人として芥川賞を受賞します。彼の代表作には、『見果てぬ夢』や『百年の旅人たち』などがあります。

1970年には、密かに韓国を訪れ、2年後の芥川賞受賞後にも再度訪韓しました。しかし、その後長期間にわたり韓国政府からの入国を拒否されることとなります。1995年11月にようやく韓国に入国することができたものの、国籍問題を巡っては何度も政府当局とトラブルを抱え続けました。1998年には金大中政権成立の際に韓国国籍を取得しますが、この経験を通じて彼は、韓国の民主化を象徴する存在としての位置に立つことになりました。

実際に、李恢成の国籍取得に関しては、作家・金石範との間で激しい論争が展開されました。金石範は朝鮮籍を「北でも南でもない『準統一国籍』」と考え、李の意見に対して批判を展開しました。こうした文壇での論争は、李の作品にも大きな影響を与えました。

受賞歴としては、1969年に『またふたたびの道』で群像新人文学賞を、1972年には上記の『砧をうつ女』で芥川賞を受賞しました。また1994年には『百年の旅人たち』で野間文芸賞も獲得しています。

彼の著作は多岐にわたり、1969年の『またふたたびの道』をはじめ、1970年の『われら青春の途上にて』、71年の『青丘の宿』、そして『死者と生者の市』（1996）や『地上生活者』（2005年以降）など、いくつもの作品が文壇に登場します。特に、彼の作品を通じて表現される民族のアイデンティティや歴史への考察は、多くの読者に深い感銘を与えています。

李恢成は、在日朝鮮人文学の代表的な作家として、故郷と文化をテーマにした作品を数多く制作し、多くの人々に感動を与えてきました。彼の文学は、単なる物語に留まらず、彼自身の苦しみや希望、そしてアイデンティティ探求の過程を反映しているのです。

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