金石範

金石範（きん せきはん）について

金石範（きん せきはん、キム・ソクポム、1925年10月2日生まれ）は、在日朝鮮人の著名な作家であり、彼の作品には故郷である済州島の歴史や文化、さらには政治的背景が反映されています。本名は慎洋根であり、朝鮮語では金石範、または金錫範と呼ばれます。彼は日本の文学界において、独自の視点を持った作品を発表し続けています。

生い立ちと経歴

金石範は、大阪市に生まれ、両親は済州島出身です。戦時中には済州島で過ごしており、朝鮮独立を目指す運動を行っていた人々と接触します。1945年に日本に戻り、1946年には再びソウルに渡りましたが、その後日本に居住を続けました。彼は関西大学専門部経済学科と京都大学文学部美学科を卒業しました。

1948年には故郷済州島で「済州島四・三事件」が発生し、多くの島民が弾圧や虐殺の被害に遭いました。この事件は彼の後作品における重要なテーマとなります。金石範は2015年にこの事件を題材にした一連の作品群で韓国の第1回「済州4・3平和賞」を受賞しましたが、この受賞は民団からの批判を呼び起こしました。

作家としての活動

1957年に『文藝首都』に短編を発表しましたが、当初はあまり注目されませんでした。彼はその後、朝鮮新報の記者として活動し、朝鮮総連との関係を維持していました。しかし、1967年に『鴉の死』が単行本として出版されると、組織から離れ、日本語での創作へと移行します。この頃に発表された「万徳幽霊奇譚」を通じて、彼は作家としての地位を確立しました。

金石範の作品群は済州島の事件を背景にし、政治と文学との関連を探索しています。特に1976年から1997年に渡って発表された『火山島』は、文学と風土を結びつける重要な作品とされています。この作品は最初「海嘯」として6年間連載され、後に『火山島』に改題されました。1984年には第11回大佛次郎賞を受賞し、1998年には第39回毎日芸術賞を受賞しています。

政治的立場と受賞

金石範は、文学と政治を切り離せないものと捉えており、その立場は彼の行動にも影響を与えています。彼は金達寿と共に『季刊三千里』を創刊しましたが、独裁政権時代の韓国を訪問したことを理由に編集委員を辞任しました。彼は自身の朝鮮籍を「準統一国籍」と位置付け、維持し続けることを選びました。李恢成が韓国国籍を取得した際には批判的な立場を示し、これにより論争が巻き起こりました。

金石範は何度も韓国政府からの招待を断っており、その理由として韓国籍の取得が条件となっていることを挙げています。1988年には民間団体の招待で、朝鮮籍のままでソウルと済州島を訪れました。

2015年には済州4・3平和賞の授賞式に出席し、その場で当時の李承晩政権の政策を批判しました。この発言は韓国の保守派から非難を受け、彼はその後の韓国訪問に際し在日韓国大使館で手続きを拒否される事態となりました。この事件が影響したとされ、金の韓国訪問計画は頓挫しました。

主な著作

金石範の主な著作には『鴉の死』、『万徳幽霊奇譚』、および7巻からなる『火山島』があり、多様なテーマを扱った文学作品を数多く発表しています。彼の作品は文学界において高く評価されており、特に済州島に根ざした強い社会的メッセージを持った内容が特徴です。彼の作家としての歩みは、在日朝鮮人文学の重要な位置を占め続けています。

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