李玖

李玖の生涯とその背景

李玖（り きゅう、イ グ、이 구）は、1931年12月29日に大韓帝国の元皇太子である李王垠とその妃で日本の皇族にあたる方子女王の間に生まれました。兄晋が幼少で夭折したため、彼は王世子としての地位が与えられました。命名式が行われた翌年1月4日には「玖」という名前が付けられ、彼の家系のルーツとして肥前佐賀藩主の鍋島直正の玄孫であることが挙げられます。彼は歴史ある家柄の出身でしたが、彼自身の人生は多くの困難に満ちていました。

第二次世界大戦後、日本国憲法の施行に伴い、李玖は王公族の地位を失いました。また、日本国との平和条約によって日本の主権が回復されるとともに、彼は日本国籍も喪失しました。幼少時代からは伏見宮博明王と親交を育み、二人は戦後、アメリカへの留学を強く希望するようになりました。

学習院高等科を卒業後、彼はアメリカのマサチューセッツ工科大学で建築学を学び、1957年に卒業しました。その後、1958年にはウクライナ系アメリカ人女性のジュリア・マロックと結婚します。この結婚生活の中で、彼は1961年に米国市民権を取得し、1969年には養女ユージニアを迎え入れることとなります。

時を経て、朴正煕政権により彼の両親は韓国に帰国が許され、1963年には李玖とその妻も帰国しました。彼らは昌徳宮楽善斎に住居を構え、李玖は1971年に航空測量会社新韓航空の共同経営者としてビジネス界に足を踏み入れます。しかし、彼は詐欺の標的となり、1979年には会社が倒産し、日本へと戻ることとなりました。

1970年には父が逝去し、李玖は喪主として3年間の喪に服すことになりました。妻ジュリアとは1974年ごろから別居するようになり、1982年に離婚しました。その後、占い師の有田絹子と再婚しますが、彼の女性関係の問題が再び波紋を呼び、1983年頃には絹子の指示のもと、貿易商相手に詐欺事件を引き起こしてしまいます。

李玖は1996年に全州李氏大同宗約院の総裁に就任し、韓国に永住帰国しました。しかし、事業の失敗や生活難から再度日本に戻らざるを得なくなり、同族会からの助けを借りて生活していましたが、次第にその支援も途絶えました。

2005年には、知人の助けを得て赤坂プリンスホテルに滞在。約1ヶ月後の7月16日、心臓麻痺により同ホテルで命を落としました。子どもがいなかったため、李王垠と方子女王から続く直系の子孫は断絶し、葬儀はソウルで行われ、多くの韓国政府要人や日本の親族が参列しました。葬儀の後、全州李氏大同宗約院により彼に「懐隠」という追号が贈られました。李玖の伯父の孫である李源が養子として李家を継承することが承認されましたが、家族間の対立も見受けられました。

李玖の人生は、時代の変化とともに多様な試練を経て、古くからの王公族としての血筋と実業界の試練が交差した波乱に満ちたものでした。彼の歩んだ道は、単なる皇族の子孫の生涯に留まらず、時代と社会の縮図をも映し出しています。

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