李箱

李箱（イ・サン）について

李箱（イ・サン）は、日本の統治時代における朝鮮の特異な詩人及び小説家です。1910年9月23日にソウルで生まれた彼は、本名を金 海卿（キム・ヘギョン）といい、江陵金氏の出身です。その作品はしばしば難解で自己中心的と評され、天才と自己欺瞞の二つの極端な評価が伴いました。彼の生涯は非常に短く、27歳でこの世を去ったことが、彼をより神秘的な存在としているのかもしれません。

幼少期と教育

李箱の幼少期は、父・金演昌と母・朴世昌のもとで育ちました。彼は2歳の時に伯父に預けられ、その後新明学校、東明学校、京城高等工業学校と進学します。中でも普成高等普通学校での彼は、絵画の才能を発揮し、画家を志していました。優秀な成績を収め、後に日本の設計士として働き始めます。

文学の道と初期の業績

1929年に普成高校を卒業した後、彼は朝鮮総督府に技手として勤務しますが、その職場で詩作に目覚めます。李箱というペンネームは、彼の友人からの贈り物であるスモモの箱に由来していると言われています。彼の作品は日本語で発表され、特に建築系の雑誌に詩を掲載しました。

詩の連載と社会的反響

1934年には、「烏瞰図」という難解な詩を朝鮮中央日報に連載し、これが大きな物議を醸します。難解さゆえの批判は激しく、社会との断絶を感じざるを得ませんでした。この時期の作品は、斬新ながらも一般には理解しがたいものであり、彼の文学的試みを揺るがす要因となりました。

私生活と精神的な苦悩

華やかな表舞台で活動していた一方で、李箱の私生活は波乱に富んでいました。精神的な苦痛や経済的困窮が続き、彼は茶房を経営したり失敗したりしながら、苦悩の中で生きていました。1936年には結婚しましたが、その生活も厳しいものでした。

東京での晩年

彼の生活は更に悪化し、1937年には東京へ移住。しかし、そこでも困窮する日々が続き、思想的不穏から拘禁される事態に陥ります。健康を害し、戻った彼は精神的にも身体的にも衰弱していました。李箱は彼の生における最後の文書、『終生記』を残し、1937年4月17日に27年の短い生涯を閉じました。

李箱の文学的影響

李箱の作品は後の韓国文学に多大な影響を与え、特にその抽象的かつ幾何学的な表現は新たな文学の潮流を生み出しました。彼の作品を通じて、日本統治下の朝鮮の文学がどのように展開したのかを知ることができます。李箱文学賞など、彼の遺産は今なお評価され続けており、彼の作品は様々な言語で翻訳されています。

李箱の存在は、文壇における孤独な天才の象徴として、今もなお多くの人々に立ち続けているのです。

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