李裕 (明)

李裕（り ゆう、1426年 - 1513年）は、明代中期に活躍した官僚です。字は資徳、号は古澹と称しました。南昌府豊城県の出身で、その生涯は波乱に満ちていました。

1454年、李裕は進士に及第し、官界入りを果たします。翌年には監察御史に任じられ、その厳正な職務遂行ぶりが早くも注目を集めました。特に、陝西巡按時代には、辺境の安定化に向けた八項目の提言を行い、その卓越した見識を示しました。

軍功を誇張していた石彪の調査では、その叔父である石亨からの圧力にも屈せず、事実を忠実に報告しました。この一件は、李裕の公正さと不屈の精神を象徴する出来事として知られています。また、当時都御史であった寇深が部下に厳しく接する中、李裕はただ一人、その圧力に屈することなく毅然とした態度を貫きました。

その後、李裕は山東按察使に抜擢され、数々の難題を解決していきます。重罪囚の判決を迅速に処理し、長年未決であった事件も次々と解決しました。大峴山で起きた反乱では、首謀者を捕らえて処刑する一方、脅されて従っていた者たちには負債を免除するという寛大な措置を講じ、反乱を鎮圧しました。

成化初年、李裕は陝西左布政使に転じ、1470年には順天府尹に就任しました。1473年には右副都御史に進み、運河の総督として水運の管理に尽力しました。さらに、江北諸府の巡撫も兼任し、白塔河と孟瀆河の浚渫事業を指揮しました。

特に、張秋・南旺や淮安西湖での木組みによる水流対策を石組みに変更したことは、彼の功績として特筆されます。この改修により、維持費の削減と効果的な水流管理が実現しました。また、淮安と鳳陽で飢饉が発生した際には、太僕寺が予備の馬を徴収したことに強く反対し、これを罷免させました。この行動は、民を思う彼の強い信念を示すものでした。

1478年、父の死去に伴い一度は官を辞しますが、1482年には右副都御史として復帰し、都察院の事務を補佐しました。1483年には右都御史に進みましたが、前任者の戴縉が宦官の汪直に媚び、西廠の再設置を企てていたことを知ると、都察院の綱紀粛正に乗り出します。しかし、この行動が反感を買い、非難を浴びることとなりました。

汪直が失脚した後、李裕は副都御史の屠滽と共に、冤罪で罪に落とされた者たちの汚名を晴らすよう請願しましたが、成化帝の不興を買い、俸禄を剥奪された挙句、南京都察院に左遷されてしまいます。しかし、1486年には北京に召還され、工部尚書、さらに吏部尚書に任命されました。

1487年、李裕は弾劾を受けて吏部尚書を罷免され、その不満を『弁誣録』に著しました。その後、官界を引退し、1513年に88歳でその生涯を閉じました。

李裕は、著書として『三朝奏議』7巻、『南台分類史抄』22巻、『古澹政略』、『山東雪冤録』1巻、『古澹集』4巻などを残しており、その思想や業績は後世に語り継がれています。彼の生涯は、清廉潔白な官吏の模範として、今なお私たちに感銘を与え続けています。

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