村上石

村上石：愛媛県で発見された希少なリチウム鉱物

村上石(むらかみせき、Murakamiite)は、愛媛県上島町岩城島で発見された、非常に珍しい鉱物です。その化学式はLiCa₂Si₃O₈(OH)で表され、リチウムを豊富に含むことが大きな特徴です。

この鉱物は、ペクトライト（ソーダ珪灰石）のナトリウムがリチウムに置き換わった構造をしています。ペクトライトグループに属する鉱物ですが、リチウムをこれほど多く含むものはこれまで知られていませんでした。そのため、村上石の発見は、地質学において極めて重要な発見と言えるでしょう。

2016年、山口大学、海洋研究開発機構、ジェムリサーチジャパン株式会社などの共同研究グループによって、この鉱物の存在が確認されました。そして、著名な鉱物学者・岩石学者である山口大学名誉教授の村上允英氏にちなんで「村上石」と命名されました。村上氏は長年、地質学研究に貢献され、1983年には櫻井賞を受賞、1994年には勲三等旭日中綬章を受章するなど、その功績は広く認められています。

実は、ペクトライトグループにリチウムを多く含む鉱物が存在するのではないかと、以前から予測されていました。しかし、長らくその実態は解明されていませんでした。そのため、村上石の発見は、長年の謎を解き明かす大きな一歩となり、この分野における空白を埋める貴重な発見となったのです。

発見者の一人である永嶌准教授らの研究によると、村上石を含む岩石におけるリチウムの分布は非常に偏っているようです。発見地においても、タイプ標本以外に村上石は発見されていません。これは、村上石が非常に稀少な鉱物であることを示唆しています。

興味深いことに、村上石は、同じくリチウムを含む片山石や杉石と共産することが分かっています。しかし、これらの鉱物とは異なる特性も持っています。例えば、片山石は短波長の紫外線で青く蛍光するのに対し、村上石は長波長の紫外線で紫がかったピンク色に蛍光するという違いがあります。この蛍光特性も、村上石を他の鉱物から識別する上で重要な手がかりとなります。

このように、村上石は、その化学組成、結晶構造、蛍光特性など、多くの点で特異な性質を持つ稀少鉱物です。今後の研究により、その生成メカニズムや地質学的意義などがさらに解明されることが期待されます。村上石の発見は、鉱物学のみならず、地球科学全体の発展に貢献する重要な発見と言えるでしょう。

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