村上達也

村上 達也（むらかみ たつや）は、1943年に生まれた日本の政治家です。長年にわたり、茨城県東海村の村長を4期にわたって務め、また全国原子力発電所所在市町村協議会の副会長も歴任しました。

茨城県那珂郡石神村（現在の東海村）に生を受けた村上氏は、茨城県立水戸第一高等学校を卒業後、1966年に一橋大学社会学部を修了しました。その後、地元金融機関である常陽銀行に入行し、主に融資関連の業務に従事しました。行内では融資業務部の副部長や、ひたちなか支店の支店長などを務め、地域経済の現場で経験を積みました。

1997年、村上氏は東海村の村長に就任します。彼の村長としてのキャリアにおいて最も特筆すべき出来事の一つが、1999年に発生したJCO臨界事故です。この未曽有の原子力事故に際し、村上氏は国の指示や県の判断を待つことなく、人命を最優先するという強い信念に基づき、独自の判断で村民に対する避難指示を実施しました。これは日本における原子力事故発生時の初の避難措置であり、自らの政治生命や法的責任を問われる可能性をも覚悟した上での極めて重い決断でした。

事故後、村上氏は原子力に依存した村の発展モデルは終焉を迎えたとの認識を強めます。その後の二度にわたる村長選挙では、新たな原子力発電所の建設に対して慎重な姿勢を明確に打ち出しました。この立場は、原子力推進を支持する勢力からの強い批判を招きましたが、いずれの選挙も僅差で勝利を収め、村政のかじ取りを続けました。

2011年の福島第一原子力発電所事故発生後、村上氏は原子力からの脱却を目指す姿勢をより一層鮮明にしました。職員に向けた朝礼では、「人に冷たく、かつ無能な国では原発を持つべきでない」と述べたと報じられるなど、国の原子力政策に対する批判的な立場を崩しませんでした。同年10月には、当時の細野豪志原子力担当大臣と面会し、東海第二原子力発電所の廃炉を直接提言しています。彼はその理由として、施設の老朽化に加え、首都東京への地理的近接性、そして周辺地域の高い人口密度を挙げ、事故発生時のリスクの高さを指摘しました。かつて村の発展を支えてきた原子力だが、もはや「疫病神、貧乏神」のような存在であり、依存を改めるべきだとの強い言葉で原子力のあり方を批判しました。

2013年7月、村上氏は任期満了に伴う次期選挙への不出馬を表明し、政治の第一線からの引退を明らかにしました。同年9月20日をもって、村長としての職を退きました。

村長退任後も、彼は社会的な活動に関与しています。2016年には、安全保障関連法に反対し、立憲主義の回復を訴える市民運動「茨城県市民連合」の共同代表を務めました。また、2021年7月には、八街市で発生した児童の死傷事故に関連し、朝日新聞の投書欄に、道路の安全対策が喫緊の課題であるとの意見を寄稿するなど、公共の安全に関心を示しました。

私生活では、長女の村上志保氏が2024年1月の東海村議会議員選挙に立候補し、最多得票で当選しています。

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