村上鬼城

村上鬼城

村上鬼城（むらかみ きじょう、1865年6月10日 - 1938年9月17日）は、明治から昭和にかけて活躍した日本の俳人であり、本名を村上荘太郎といいました。彼は、司法代書人（現在の司法書士）としても活動しました。

生涯

鬼城は、鳥取藩士の家に生まれましたが、幼少期に群馬県高崎市に移り住み、その後、母方の村上家の養子となりました。軍人を志すも耳の病で断念し、明治法律学校で法律を学びながら司法代書人となりました。高崎裁判所での勤務を機に、生涯を高崎で過ごすことになります。

俳句は、正岡子規に師事し、俳誌『ホトトギス』に投句を続けました。子規の死後は、高浜虚子に指導を受け、『ホトトギス』の同人として活躍。1918年には作品が入選し、俳人としての地位を確立しました。司法代書人の傍ら、俳句の撰者としても才能を発揮しました。

私生活では、8人の娘と2人の息子に恵まれましたが、常に経済的に困窮していたと言われています。しかし、多くの人々に支えられ、51歳で代書人を解雇された際には、高浜虚子門下の弁護士の尽力で復職を果たすなど、人脈の広さも窺えます。

1938年、胃癌のため高崎の自宅で74歳で亡くなりました。墓所は高崎の龍広寺にあります。

作風

鬼城の句は、自身の不遇な境遇から来る、困窮した生活や人生への諦念、弱者への共感、病苦への憐憫などを詠んだものが多く、独特の倫理観が特徴です。また、自身も耳が不自由だったことから、身体障碍者に対する感情を詠んだ句も多く、今日では差別的な表現と捉えられるものもあります。しかし、彼の句は、阿波野青畝など多くの俳人に影響を与え、「心耳の詠み人」として知られています。

代表的な句

小春日や石を噛みいる赤蜻蛉
冬蜂の死にどころなく歩きけり
闘鶏の眼つぶれて飼われけり
鷹のつらきびしく老いて哀れなり
生きかはり死にかはりして打つ田かな
ゆさゆさと大枝ゆるる桜かな
蛤に雀の斑（ふ）あり哀れかな

これらの句からもわかるように、鬼城の句は、動物や自然を題材にしたものが多く、それらに対する深い観察眼と感情が込められています。

句集

『鬼城句集』（1917年）
『定本鬼城句集』

参考文献

『俳句人名辞典』 常石英明編著 金園社
* 松本旭「村上鬼城の生涯 ―代書人罷免事件について―」『連歌俳諧研究』第1983巻第65号、俳文学会、1983年、32-39頁

村上鬼城は、その独特な視点と表現で、俳句の世界に大きな足跡を残した俳人と言えるでしょう。

もう一度検索