村井長世

村井長世

村井長世（むらい ながよ）は、江戸時代後期、加賀藩の重臣として活躍した人物です。安永5年（1776年）に生まれ、文政10年（1827年）に52歳で亡くなりました。加賀八家の一つである村井家の8代目当主であり、藩の要職を歴任し、財政改革に大きく貢献しました。

生涯

長世は、加賀藩の年寄であった村井長穹（むらい ながたか）の子として金沢に生まれました。寛政2年（1790年）に父が亡くなると、15歳という若さで家督を相続し、1万6500石の知行を領する身となりました。その後、年寄をはじめ、金沢城代、勝手方主付（かってがたしゅづき）、産物方主付（さんぶつかたしゅづき）など、藩の重要な役職を歴任しました。

寛政9年（1797年）、藩主である前田斉広（まえだ なりなが）と諱（いみな）の一字が同訓であることから、長世は先祖である村井長頼（むらい ながより）が主君前田利長（まえだ としなが）より賜った「長」の字の使用許可を願い出て、認められました。文化2年（1805年）には、経世家である海保青陵（かいほ せいりょう）から教えを受け、藩政に対する見識を深めました。

文化10年（1813年）、長世は父と同じ産物方主付に就任し、藩の財政危機を打開するために、特産品の生産を奨励しました。文化11年（1814年）には、産物方が一旦廃止されましたが、文政元年（1818年）には勝手方主付として再び藩財政を主導することとなります。その後、再び産物方主付となり、上方の加賀絹の売り上げ不振を打開するため、新たな市場として江戸での販売を開始しました。この取り組みは、藩の財政に大きく貢献することとなりました。

文政4年（1821年）には、従五位下・豊後守（じゅごいげ ぶんごのかみ）に叙任され、文政5年（1822年）には、藩主前田斉泰（まえだ なりやす）の家督相続の御礼言上のため、江戸城で将軍徳川家斉（とくがわ いえなり）に拝謁しました。

文政10年（1827年）10月26日、長世は52歳でその生涯を閉じました。法名は正壽寺子宣長世大居士（しょうじゅじしせんちょうせだいこじ）。墓所は金沢市野田山墓地にあります。家督は嫡男の村井長道（むらい ながみち）が相続しました。

人物・逸話

長世は、藩政に尽力する一方で、文化人としても優れた才能を持っていました。彼は「屋漏堂禽譜（おくろうどうきんぷ）」「屋漏堂虫譜（おくろうどうちゅうふ）」「屋漏堂木譜（おくろうどうもくふ）」など、詳細な動植物図鑑を編纂しました。これらの図鑑は、当時の自然科学研究において貴重な資料となっています。

長世が「屋漏堂」という号を用いたのは、ある逸話に感銘を受けたためです。それは、藩士佐々主殿（さっさ しゅどの）が、雨漏りのする貧しい家に住みながらも、主家のために武具と軍資金を用意していたというものでした。この逸話を知った長世は、佐々の忠義心と質素な生活態度に深く感銘を受け、自らの号としたのです。

まとめ

村井長世は、加賀藩の財政を立て直すために尽力した名臣であり、同時に文化人としても多くの業績を残しました。彼の功績は、現代においても高く評価されています。

参考資料

* 東京大学史料編纂所「加賀藩史料」

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