村岡総本舗

株式会社村岡総本舗：伝統を守り続ける老舗羊羹店

株式会社村岡総本舗は、佐賀県小城市に本店を置く、明治32年創業の羊羹・和菓子製造販売業者です。120年以上の歴史の中で、伝統の製法と味を守り続け、地元のみならず全国の和菓子ファンに愛されています。

創業と「小城羊羹」の誕生

村岡総本舗は、明治32年に長崎の陣内琢一から羊羹製造の道具一式を買い受けたことから始まりました。同社の代表的な商品である「小城羊羹」は、二代目社長の村岡安吉氏が名付け親と言われています。

明治から大正にかけて、小城の羊羹はその美味しさから各地で評判を呼びました。その人気にあやかり、他地域の同業者が「小城羊羹」の商標登録をしようとする動きがあったほどです。しかし、村岡総本舗を含む小城の羊羹業者三社が異議を申し立て、商標登録は却下されました。現在、「小城羊羹」の商標は地元の「小城羊羹協同組合」が登録し、組合加盟業者間で共有されています。

江戸時代からの伝統製法

村岡総本舗の羊羹の特徴は、創業以来、江戸時代の煉り羊羹の製法を受け継ぎ、作り続けている点にあります。特に「切り羊羹」や「箱羊羹」といった商品は、その製法が江戸時代の菓子屋「船橋屋織江」の「菓子話船橋」の煉り羊羹と同様であり、全国的にも珍しいとされています。伝統的な製法を守り続けることで、独特の風味と口当たりを実現しています。

店舗と羊羹資料館

村岡総本舗は、小城本店を中心に佐賀県内に8店舗の直営店を展開しています。本店に隣接する「村岡総本舗羊羹資料館」は、羊羹の歴史と製造工程を学べる貴重な施設です。

この資料館は、昭和16年に砂糖蔵として建てられた建物を、昭和59年3月に改装して開館しました。当時、羊羹は携帯食や保存食として重宝されており、陸軍御用達や鉄道省門司鉄道管理局（現・JR九州鉄道事業本部）の指定品にもなっていました。砂糖は燃えやすく湿気に弱いため、資料館の建物は防火防湿構造となっています。木造の躯体、寄棟の屋根、和小屋の小屋組など、伝統的な和風建築でありながら、ファサードは煉瓦とタイルを用いた洋風の意匠が施されており、その独特な外観が特徴です。

資料館内では、伝統製法の羊羹の製造工程や羊羹の歴史に関する映像を鑑賞できるほか、羊羹の試食も楽しめます。2階には、昔の道具類やパッケージ、原材料などが展示されており、羊羹作りへのこだわりを感じることができます。

村岡総本舗羊羹資料館は、平成9年6月12日に国の登録有形文化財に登録されました。また、平成17年には佐賀県から「22世紀に残す佐賀県遺産」に指定されています（隣接する本店建物と合わせて）。

その他の情報

工場: 小城本店から数百メートルの場所に位置しています。
関連業者: 昭和初期に村岡家から独立した「村岡屋」も羊羹を製造販売しています。
* 羊羹資料館: 成田羊羹資料館も羊羹に関する資料を展示しています。

村岡総本舗は、長きにわたり伝統の味を守り続けるとともに、羊羹の魅力を伝える活動にも力を入れています。小城を訪れた際には、ぜひ村岡総本舗の羊羹を味わい、その歴史と文化に触れてみてください。

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