村田システム

村田システム：角道を開けぬ革新的戦法

村田システムは、村田顕弘六段が開発した独自の将棋戦法です。その最大の特徴は、序盤から角道を積極的に開けず、王の頭上にある歩を素早く突く点にあります。一見すると奇抜な戦法ですが、プロ棋士の間でも注目を集め、近年では藤井聡太竜王名人といったトップ棋士も参考にしていることから、その実力と可能性の高さが伺えます。

角道不突、そして右銀の活用

村田システムの基本形は、先手▲2六歩から始まります。後手が△8四歩と応じれば、▲4八銀、△8五歩、▲7八金…と進行し、独特の駒組みを構築していきます。この過程で、角行は相手の動向を見て、必要に応じて角道を一時的に開いたり、逆に引いて活用したりと、柔軟な対応が求められます。

嬉野流を起源とするこの戦法は、角道を最初から開けないという点で共通していますが、嬉野流が左銀を主体とするのに対し、村田システムは右銀を積極的に活用することが大きな違いです。右銀を巧みに操ることで、相手の予想外の攻めを仕掛け、局面を有利に進めていくことができます。また、村田システムでは「角道不突」ではなく「角道保留」という表現を用いることが多く、角道を完全に放棄するのではなく、状況に応じて柔軟に対応していく姿勢が強調されています。

様々なバリエーションと進化

村田システムは、その柔軟性から様々なバリエーションが生まれています。「右銀村田システム」「左銀村田システム」「後手番村田システム」といった基本的なものから、「新・村田システム」「豊島流村田システム」といった発展形まで、棋士によって様々な工夫が凝らされています。

特に注目すべきは、2023年の第71期王座戦挑戦者決定トーナメント2回戦、藤井聡太竜王名人対村田顕弘六段戦で採用された「新・村田システム」です。この対局では、村田六段は序盤から積極的な攻めを見せ、一時的に94%もの高い勝率を記録しました。最終的には藤井竜王名人の巧みな逆転劇で敗れましたが、村田システムの潜在能力の高さを改めて印象づける一局となりました。

豊島流村田システムは、豊島将之九段が用いる独特なスタイルで、後手番において角換わりを拒否し、独自の駒組みで厚みのある陣形を構築します。先手の角換わりを許さず、独自の駒組みで厚い陣形を作ることで、相手の攻めを凌ぎ、反撃に転じる戦略です。この戦法は、2024年3月17日の第49期棋王戦でも藤井聡太棋王によって採用され、タイトル防衛に大きく貢献しました。

プロ棋士による実践と評価

村田システムは、アマチュア将棋界で強豪として知られる木村孝太郎氏も用いており、その実力は既に実証されています。プロ棋士の間でも、永瀬拓矢王座、渡辺明名人も実践しており、その有効性が認められています。さらに、村田顕弘六段自身も2023年から積極的に使用し、多くの勝利を収めています。

将棋ライターの富士波草佑氏は、村田システムについて「あらゆる急戦策への対応が手厚く、ぬかりなく記されている」と高く評価しており、その完成度の高さがうかがえます。また、村田六段自身は「自分の注文で局面を誘導できる」と述べており、戦術的な柔軟性と高い制御性を兼ね備えていることが分かります。

今後の発展

村田システムは、将棋界において新たな戦術的可能性を開拓したと言えるでしょう。今後も、プロ棋士たちによってさらに研究・改良が重ねられ、更なる進化を遂げるものと期待されています。その発展は、将棋界全体の戦術の多様化に貢献し、より魅力的な将棋を生み出すことに繋がっていくでしょう。

もう一度検索