来島海峡第三大橋

来島海峡第三大橋（くるしまかいきょうだいさんおおはし）は、本州と四国を結ぶ主要な交通網である西瀬戸自動車道、通称「しまなみ海道」の一部として、愛媛県今治市沖の瀬戸内海に位置する来島海峡に架けられた壮大な吊橋です。

この橋は、来島海峡大橋と呼ばれる一連の長大橋群を構成する三つの橋のうち、最も今治市側に位置しています。具体的には、愛媛県今治市本土と、その沖合に浮かぶ馬島との間を結ぶ役割を担っています。しまなみ海道は、自動車専用道路としての機能に加え、自転車や歩行者の通行路が併設されていることが大きな特徴であり、来島海峡第三大橋もその例外ではありません。これにより、多様な手段で海峡を渡ることが可能となり、観光や地域交流の促進にも貢献しています。

橋の構造は、単径間2ヒンジ補剛箱桁吊橋という形式を採用しています。これは、一本の長い径間を支えるための構造であり、特に長大な橋に用いられる堅固な設計です。来島海峡第三大橋は、その全長が1570メートルに及び、中央径間は1030メートルという規模を誇ります。この規模は世界的にも有数であり、特に中央径間の長さにおいては、建設当時はもちろん現在でも日本の橋梁の中でトップクラスに位置する長大橋の一つとして数えられています。

道路としては、第1種3級に分類されており、設計速度は時速80キロメートルですが、安全上の理由から通常時の規制速度は時速70キロメートルに設定されています。車線数は4車線が確保されており、スムーズな交通の流れを支えています。

この巨大な構造物の建設は、1988年5月15日に着工され、約11年の歳月をかけて進められました。そして、1999年5月1日に待望の供用が開始され、しまなみ海道の全線開通と共に重要な役割を担うこととなりました。

運用面では、歩行者道とバイク道が自動車専用道路部に併設されている点が特筆されます。これはサイクリングや徒歩での旅行者にとって大変便利な設備ですが、安全確保のため、気象条件によっては通行規制が実施されます。

例えば、風速が毎秒15メートルに達すると、歩行者道とバイク道の通行が規制されるほか、自動車専用道路部でも自動二輪車の通行が禁止され、四輪車には時速50キロメートルの速度規制が適用されます。さらに風速が毎秒25メートルを超えるような荒天時には、自動車専用道路部の全ての通行が停止される措置が取られます。これらの規制は、橋梁の安全性と利用者の安全を守る上で極めて重要です。

また、建設にあたっては景観への配慮もなされました。特に、今治側のアンカーブロック（吊橋のケーブルを固定する巨大な基礎部分）は、周辺の自然景観を損なわないよう、糸山半島の地形を利用して地中に埋め込まれています。このような工夫は、単なる交通インフラとしての役割だけでなく、地域の美しい環境との調和を目指した設計思想を示しています。

来島海峡第三大橋は、その規模、構造、そして多様な通行手段への対応といった特徴から、瀬戸内海のランドマークの一つであり、日本の長大橋技術を代表する存在として、今治と馬島、そして本州と四国を結ぶ重要な架け橋としての機能を果たし続けています。

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