来賓

「来賓」（らいひん）という言葉は、主に特定の催しや集まりに、主催者から正式に招かれて参加する客を指して用いられます。漢字表記の通り「来る賓客」を意味し、そこには招いた側からの敬意や、迎え入れる姿勢が込められています。単なる訪問者や参加者とは異なり、式典や記念行事、重要な会議、披露宴といった特別な場において、その場にとって重要な存在であると認められた人物に対して使われるのが一般的です。

例えば、学校の卒業式や入学式では、地域の自治体関係者や学校の運営に関わる人々、あるいは卒業生の保護者代表などが来賓として招かれることがあります。企業の株主総会や式典においては、取引先企業の重役、金融機関の代表、あるいは業界の著名人などが来賓として出席することがあります。来賓は多くの場合、会場の中でも特別な席（来賓席）が用意され、時には主催者からの謝辞が述べられたり、来賓自身が祝辞や挨拶を述べたりすることもあります。このように、「来賓」は単に物理的に訪れる客を指すだけでなく、その場における彼らの立場や、主催者との関係性を示す言葉として機能します。

日本語における「来賓」という言葉は、こうした特定の場に招かれた敬うべき客という文脈で使用されることがほとんどですが、世界には同名の地理的な固有名詞も存在します。特に中華人民共和国には、「来賓」という名称を持つ行政区分が知られています。その一つが、広西チワン族自治区の中央部に位置する「来賓市」（簡体字: 来宾市）です。来賓市は、広西チワン族自治区を構成する地級市（中国の行政区分の一つで、日本の都道府県に近い階級）であり、その区域内に複数の県や市轄区を有しています。この都市がなぜ「来賓」という名を持つのか、その由来については様々な説が考えられますが、言葉の定義である「招かれた客」との直接的な語源的な関連性は、一般的にはあまり意識されません。

また、かつて存在した「来賓県」という行政区分もありました。これは中華人民共和国の遼寧省、現在の葫芦島市綏中県にあたる地域に設けられていた県です。しかし、歴史的な行政区画の変遷を経て、現在ではこの名称の県は存在していません。このように、「来賓」という同形の語は、現代中国において地名として使われる例と、かつて地名として使われていた例が存在します。

総じて、「来賓」という言葉は、特定の目的に招かれた客という日本語の一般的な意味合いに加え、中国の特定の地域を示す固有名詞としても用いられるという、複数の側面を持つ語彙と言えます。文脈によって、それが人の立場を指すのか、あるいは地理的な場所を指すのかを適切に判断することが求められます。

もう一度検索