東京キリスト教青年会会館

東京キリスト教青年会会館

東京キリスト教青年会会館は、かつて神田美土代町に存在した東京青年会（現・東京YMCA）の本部会館です。1894年（明治27年）に建設され、その壮麗な姿から「文化の御殿」として親しまれました。この会館は、単なる建物ではなく、明治、大正、昭和の各時代を通じて、文化、スポーツ、思想など、多岐にわたる分野で日本の近代化に大きく貢献した、非常に重要な場所でした。

歴史と概要

会館は、1889年に北米YMCAから派遣されたJ.T.スウィフトが、遺産と募金によって建設資金を調達し、ジョサイア・コンドルが設計を手掛けました。赤レンガ造りの建物は、1000人収容の大講堂を備え、アインシュタイン、内村鑑三、板垣退助といった著名な思想家たちが講演を行いました。また、日本で初めて体育館に室内温水プールが設置された場所としても知られています。このプールでは、近代泳法の研究が行われ、オリンピック選手たちの練習や合宿にも利用されました。高石勝男や古橋広之進など、多くの名選手を輩出し、日本水泳界の国際化に大きく貢献しました。

東京YMCAは、バスケットボールやバレーボールなど、多くのスポーツを日本に紹介し、普及に努めたことでも知られています。会館は、これらの活動の中心地であり、日本のスポーツ界の発展にも貢献しました。

多様な活動

会館では、英語の教授、近代スポーツの普及、人事相談、学生寄宿舎の提供、講演会、聖書研究会、小集団活動など、多岐にわたる事業が展開されました。これらの活動を通じて、多くの人々に学びと交流の場を提供し、社会の発展に貢献しました。

変遷

• - 1880年: 東京青年会が結成。
• - 1894年: 東京基督教青年会会館が建設。
• - 1895年: 救世軍の開戦を告げる集会が開催。
• - 1900年: 在日プロテスタント宣教師会議が開催。
• - 1901年: 足尾銅山鉱毒問題に関する会合が開催。
• - 1905年: 明治元訳聖書の改訳のための会合が開催。
• - 1917年: 日本初の室内温水プールが開場。
• - 1922年: アルベルト・アインシュタインが講演。
• - 1923年: 関東大震災で会館を失う。体育館は避難所として提供。
• - 1945年: GHQに接収され、米軍婦人宿舎となる。
• - 1949年: 会館が返還。
• - 1992年: 本館ビルが改築。
• - 2003年: 経営難により、会館を売却。

その後

会館は、2003年に経営難のため売却され、その後取り壊されました。跡地には「住友不動産神田ビル」が建設されています。しかし、東京キリスト教青年会会館が日本の歴史に残した功績は、決して色褪せることはありません。

参考文献

• - 鈴木範久『内村鑑三』清水書院、1967年。
• - 鈴木範久『聖書の日本語』岩波書店、2006年。
• - 高橋昌郎『明治のキリスト教』吉川弘文館、2003年。
• - 原誠 著、キリスト新聞社 編『「キリスト新聞」で読む戦後のキリスト教史』キリスト新聞社、2003年。
• - 守部喜雅『日本宣教の夜明け』いのちのことば社、2009年。
• - 日本キリスト教歴史大事典編集委員会 編『日本キリスト教歴史大事典』教文館、1988年。
• - 落合則男「東京キリスト教青年会」『日本キリスト教歴史大事典』1988年、428頁。
• - 勝地次郎「JOY! 喜び満ちあふれる救世軍」『ときのこえ』第9巻、2015年。
• - 日本キリスト教歴史大事典編集委員会 編『日本キリスト教史年表』教文館、1988年。
• - 尾原悟 著、日本キリスト教歴史大事典編集委員会 編『日本キリスト教史年表(キリシタン・カトリックの部分)』1988年。
• - 山川令子 著、日本キリスト教歴史大事典編集委員会 編『日本キリスト教史年表(正教会の部分)』1988年。
• - 鈴木範久 著、日本キリスト教歴史大事典編集委員会 編『日本キリスト教史年表(プロテスタントの部分)』1988年。

外部リンク

• - 東京YMCA
• - 旧・東京ＹＭＣＡホテルTokyo YMCA Hotel (N/A)

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