東京倶楽部

東京倶楽部：日本の社交クラブの草分け

1884年（明治17年）5月、日本の近代化が進む中で、会員制社交クラブ「東京倶楽部」が設立されました。交詢社や日本倶楽部と並び、日本の社交クラブを代表する存在として、その歴史と伝統は深く社会に根付いています。

設立の背景：国際親善と紳士の集い

東京倶楽部の設立は、当時の国際情勢と深く関わっています。日英修好通商条約改正の交渉が進められていた頃、英国の駐日大使から日本に紳士が集う社交クラブがないという内容の書簡がビクトリア女王に送られたという情報が、明治天皇の耳に入りました。この情報を受け、政府は英国留学経験のある伊藤博文らから情報を集め、外務卿で鹿鳴館設立者でもある井上馨に社交クラブの設立を命じました。

英国のジェントルマンズ・クラブをモデルとして設立された東京倶楽部は、当初75名の会員でスタートしました。会員は旧華族や皇族を始め、政界、財界、官界の要人たちなど多様な分野の人物が名を連ね、常陸宮正仁親王が名誉総裁を務めています。設立の目的は、国際親善の増進、会員相互の親睦、そして知識の交換とされています。鹿鳴館設立の意図にも通じる「内外人の交際を一層親密ならしめん」という理念が、東京倶楽部の活動の根底にあります。

歴史：鹿鳴館から霞が関ビルディングへ

設立当初、東京倶楽部は鹿鳴館の一室を拠点としていました。その後、1908年（明治41年）に社団法人として認可を受け、1912年（大正元年）には麹町（現在の霞が関）の国有地に赤レンガのビルを建設し、拠点を移転しました。

第二次世界大戦中の東京大空襲でビルが焼失するも、東京倶楽部はバラックを建てて活動を継続。戦後復興の中で、三井不動産との協力により、霞が関ビルディング建設に参画し、地上6階建ての東京倶楽部ビルディングが霞が関に建設されました。このビルには、東京倶楽部の他、アリタリア航空やルフトハンザ航空なども入居しました。

建て替えと六本木への移転

40年の歳月を経て老朽化が進んだ東京倶楽部ビルディングは、三井不動産との共同で複合ビルに建て替えられることとなり、東京倶楽部は2005年、六本木1丁目に新築されたクラブハウスへ移転しました。新東京倶楽部ビルディングは2007年に竣工し、霞が関の街並み再生に貢献しています。

東京倶楽部ビルディング：霞が関のランドマーク

建て替えられた東京倶楽部ビルディングは、霞が関ビルディングや文部科学省などを含む街区全体の地区計画に基づいて設計されました。外堀通りと霞テラスという二つの正面を持つ建物は、街区全体との一体感を意識したデザインとなっています。

オフィスフロアは4階から14階に渡り、テナントの利便性を考慮した設計が施されています。また、1階から3階には商業ゾーン「霞ダイニング」が設けられ、霞が関ビルディングのレストラン街と一体的に運営されています。

東京倶楽部クラブハウス：会員専用の社交空間

東京倶楽部クラブハウスは、会員、ゲスト、そして提携クラブの会員のみが利用できる会員制施設です。谷口吉生氏設計による、洗練された空間は、バーや食堂を備え、会員専用の地下駐車場も完備しています。ドレスコードが設けられており、会員同士の交流の場として、格式と伝統が守られています。

国際的なネットワーク：レシプロカルクラブ

東京倶楽部は、世界中のレシプロカルクラブ（相互利用クラブ）との協定を結び、会員はこれらのクラブを一時的に利用することができます。これは、国際親善という東京倶楽部の設立理念を体現する取り組みの一つと言えるでしょう。

東京倶楽部は、その歴史と伝統、そして国際的なネットワークを通じて、日本の社交文化の中核として、これからも発展していくことでしょう。

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