東京国際女子マラソン

東京国際女子マラソン（とうきょうこくさいじょしマラソン）は、日本の首都・東京を舞台に、1979年から2008年までの30年間にわたり開催された、歴史ある女子マラソン大会です。

この大会は、国際陸上競技連盟（IAAF、現在のワールドアステティックス）が世界で初めて公認した女性限定のマラソン競技として、女子マラソンの黎明期において特筆されるべき存在でした。第1回大会は1979年に開催され、以来多くの世界のトップランナーが東京に集結しました。

コースは原則として国立霞ヶ丘競技場をスタート・ゴールとし（ただし第12回大会を除く）、大森海岸交番前を折り返す42.195キロメートルの設定でした。都心部の多様な風景を巡るルートで、数多くの著名なランドマークを通過しました。このコース最大の難所として選手たちに恐れられたのが、35キロ地点を過ぎた水道橋駅から四谷にかけての上り坂です。およそ30メートルもの高低差があり、「強力坂」という別名でも知られました。世界のトップクラスの選手さえ苦戦し、シドニーオリンピック金メダリストの高橋尚子選手もここで苦い経験をしています。

本大会は、日本の陸上界において、オリンピックや世界陸上選手権といった主要国際大会の代表選手を選考するための、最初の重要なレースとして位置づけられました。これにより、国内の有力選手にとって大会への出場機会が増加し、世界レベルでの競技力向上に貢献しました。

第1回大会の優勝者はイギリスのジョイス・スミス選手でしたが、1983年の第5回大会で佐々木七恵選手が日本人として初めて優勝を飾り、日本の女子マラソン史に名を刻みました。大会が代表選考の重要な機会となるにつれて、日本選手の活躍が目覚ましくなり、全30回のうち11回を日本選手が制しました。特に、1995年から1999年にかけての5連覇、そして2005年から2008年にかけての4連覇という、日本選手による連続優勝記録も生まれました。

2003年に開催された第25回大会は、主催者の一つである朝日新聞の創刊125周年記念事業として特別な形式で行われました。この大会では、エリート選手に加えて男女の市民ランナー合計約3,000人が参加し、本大会の歴史で唯一男子選手が出場した回となりました。また、東京都心部を一般市民が走る初めてのフルマラソンとしても記憶されています。その後も女子限定で「市民の部」は継続されました。

男子の東京国際マラソンが2007年に東京マラソンに統合された後も、本大会は独立して開催を続ける方針でした。しかし、都心部で年に複数回大規模な交通規制を行うことの困難さについて、警視庁から指摘を受けたことが大会終了の決定要因となりました。これを受け、2007年12月、主催者から2008年の第30回をもって大会を終了することが発表されました。

大会終了後、同じ11月の時期に神奈川県横浜市で横浜国際女子マラソンが新たに開催されることになりました（2014年終了）。東京国際女子マラソンの「市民の部」は横浜では実施されず、事実上東京マラソンの女子の部に統合されました。

そして、2008年11月16日、第30回大会が開催され、30年間の歴史に幕を下ろしました。最後の大会では、第1回優勝者のジョイス・スミス氏がスターターを務めました。

大会は日本陸上競技連盟、朝日新聞社、テレビ朝日が主催し、東京陸上競技協会が主管しました。協賛企業は、大会の歴史を通じて資生堂、みずほフィナンシャルグループ、大和証券グループ、NTTドコモと変遷しました。

参加資格は、日本陸連登録の19歳以上の女性選手で、一定レベル以上の公認記録を持つことが必要でした。国内外から招待選手も出場しました。

大会の模様は、テレビ朝日系列を中心に全国に中継されました。1995年大会では実況アナウンサーを全て女性が担当するなど、特徴的な試みも行われています。ラジオ中継は文化放送が担当しました。

本大会のシンボル的な存在として知られるのが、最多出場記録を持つ松田千枝選手です。

この大会は、男子の東京国際マラソン（2006年終了）とともに、2007年に始まった東京マラソンへとマラソンイベントの流れを繋ぐ役割も果たしました。

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