東京国際貿易センター

株式会社東京国際貿易センター

株式会社東京国際貿易センター（とうきょうこくさいぼうえきセンター）は、日本の貿易振興と産業展示の場を提供することを目的として設立され、かつて東京都中央区晴海に所在した東京国際見本市会場の主要施設を長年にわたり運営管理した企業です。1958年（昭和33年）の設立から、1996年（平成8年）に会場が閉鎖されるまでの約37年間、国内外の見本市や博覧会の開催を支えました。その後、同社は2003年（平成15年）に他の運営主体と統合し、現在の株式会社東京ビッグサイトへと発展的に改組されています。

設立の背景と構想

第二次世界大戦後、日本の経済復興が進む中で、貿易機能の再構築と強化は喫緊の課題でした。特に、財閥解体によってそれまで貿易取引の多くを担っていた商社の仲介機能が弱体化し、輸出業務の停滞が懸念されていました。このような状況下、電機や機械メーカー、さらには輸出雑貨を扱う業界からは、自社製品を恒常的に展示・紹介できる常設の陳列館設置を求める声が高まっていました。

一方、国際的な視点では、アメリカ合衆国で「トレード・センター」構想が進展していました。これは、見本市会場だけでなく、貿易取引に関連するあらゆる施設を集約し、効率的な貿易促進を図る試みであり、サンフランシスコやニューオーリンズなどでその機運が高まっていました。

国内においても、貿易振興策として、1954年（昭和29年）から大阪と東京で交互に国際見本市が開催されるようになっていました。これらの見本市は日本の貿易拡大に大きく貢献しましたが、開催のたびに仮設の展示施設を建設・解体する必要があり、その運営は非効率的でした。より効果的かつ継続的な貿易振興を図るためには、恒久的な見本市会場の整備が不可欠であるという認識が共有されるようになりました。

また、既存の国内展示会、例えば千代田区大手町の都立産業会館で開催されていた「ビジネスシヨウ」や、日比谷公園・後楽園競輪場を使用していた「自動車ショー」なども、規模の拡大に伴い、より広い屋内展示空間を必要としていました。

こうした国内外の動きと国内産業界からの要望に応える形で、恒久的な見本市会場の建設に加え、貿易に関わる官公庁、商社、銀行、海運・航空会社など、あらゆる関係者が集まり、貿易取引に必要な諸機能を備えた総合的な「貿易センタービル」を設立する構想が財界を中心に検討されるようになりました。

さらに、東京都中央区晴海地区では、当時、連合国軍から返還される予定だった米軍飛行場跡地の活用計画が進められており、この広大な土地が見本市会場の適地として注目されました。

会社の設立と施設の建設

上記の背景と構想に基づき、恒久的な貿易振興拠点を整備するため、官民が協力して新たな会社を設立する運びとなりました。1958年（昭和33年）、東京都を筆頭に、輸出関連の主要メーカーや商社など、日本の全産業界有志の出資によって、株式会社東京国際貿易センターが設立されました。同年4月1日に正式に登記が行われ、授権資本20億円、第1回払込資本金12億円体制で事業を開始しました。このうち、払込資本金12億円のうち6億円分は、東京都が晴海の土地49,590平方メートル（約15,000坪）を現物出資したものであり、残りの6億円分は財界からの株式引き受けによって賄われました。これは、まさに官民一体となった国家的なプロジェクトであったことを示しています。設立当初の代表者には、会長に渋沢敬三氏、社長に加納百里氏が就任しました。

会社の設立趣意書には、日本の貿易発展と産業振興への貢献という設立目的が明確に記されていました。

会社の設立と並行して、晴海地区における見本市会場の建設計画が具体化されました。計画地は、東京都からの現物出資による敷地約15,000坪に加え、今後埋め立てられる予定の隣接地約30,000坪を含む合計約54,500坪とされました。最初の施設計画である第1期工事では、重工業製品を展示する重工業館2棟（延床面積約6,000坪）、軽工業製品向けの軽工業館1棟（延床面積約2,000坪）、さらに事務所、売店、食堂などが整備されることになりました。これらの施設は1959年（昭和34年）の竣工を目指し、同年5月に開催予定だった「第3回東京国際見本市」での使用を見込んで建設が進められました。

施設が完成すると、設立当初から会社の取り組みに積極的に協力していた業界団体や官庁によって常設展示館が開設されました。例えば、日本機械工業連合会は西館に常設の「日本機械展示館」を、通商産業省が設立した財団法人日本輸出雑貨センターは南館に常設の「日本輸出雑貨展示館」をそれぞれ設置し、日本の主要輸出品を恒常的に紹介する拠点としました。

その後の展開

株式会社東京国際貿易センターは、晴海の東京国際見本市会場を中核的な運営主体として、設立翌年の1959年4月から、様々な国際見本市、産業展示会、博覧会、イベント等の会場提供と運営管理を約37年間にわたり担いました。この期間、晴海の会場は日本の国際貿易や産業発展を国内外にアピールする重要な拠点として機能しました。

時代の変化とともに、より大規模かつ機能的な展示施設の必要性が高まり、東京都江東区有明に新たな国際展示場が計画されました。そして1996年（平成8年）3月31日、晴海の東京国際見本市会場はその役割を終え、閉場しました。会場機能は、有明に完成した東京国際展示場、通称「東京ビッグサイト」へと引き継がれました。

晴海会場の閉場後も、株式会社東京国際貿易センターは存続しましたが、2003年（平成15年）4月には、同じく東京国際見本市会場の運営に関わっていた社団法人東京国際見本市協会と統合・再編されました。この統合により誕生したのが、現在、東京ビッグサイトの運営・管理を担っている株式会社東京ビッグサイトです。

このように、株式会社東京国際貿易センターは、戦後日本の貿易復興・発展期において、恒久的な国際展示施設の整備という国家的要請に応え、長年にわたりその運営を担った重要な企業であり、現在の東京ビッグサイトへと繋がる歴史的な役割を果たしました。

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