東京外かく環状道路

東京外かく環状道路（外環道）とは

東京外かく環状道路（以下、外環道）は、東京都心部を取り囲むように計画された、全長約85キロメートルの環状道路です。大田区から埼玉県を経由し、千葉県市川市に至ります。首都圏の高速道路網を構成する「3環状9放射」の一部であり、首都高速中央環状線や首都圏中央連絡自動車道（圏央道）と合わせて、首都圏3環状道路と総称されます。

外環道は、都心から約15キロメートル圏を環状に結び、慢性的な交通渋滞の緩和と、首都機能の強化を目的としています。高速道路部分（自動車専用部）と一般道路部分から構成されており、それぞれ「東京外環自動車道」と国道298号として供用されています。

外環道の歴史

外環道の計画は、1950年代後半に始まりました。都心部の過密化が進む中で、通過交通を分散させる必要性が高まったためです。

1966年には、東京都区間の都市計画が決定しましたが、用地買収や環境問題に対する反対運動が起こり、計画は一時凍結されました。

1990年代以降、計画は再度見直され、地下構造化などの対策が検討されました。2000年代に入ると、事業が本格的に再開され、一部区間が開通しています。

現在の状況

現在、外環道のうち開通しているのは、以下の区間です。

自動車専用部（高速道路）：大泉JCTから高谷JCTまで
一般部（一般道路）：和光市から市川市まで

自動車専用部は「東京外環自動車道」、一般部の多くは「国道298号」として供用されています。

未開通区間については、現在も事業が進められています。特に、関越道から東名高速間は、大深度地下トンネル方式での建設が進められており、技術的な課題を克服しながら工事が進められています。

計画中の区間

外環道には、現在事業中または計画中の区間がいくつかあります。

東京区間（関越道 - 東名高速間）
大深度地下トンネル方式で建設中。
2020年東京オリンピックまでの完成を目指していましたが、遅延しています。
調布市での陥没事故により工事が一時中断しましたが、一部再開しています。
東京区間（東名高速以南）
ルートや構造などの詳細な計画は未定です。
多摩川の北岸を通る案と南岸を通る案が検討されています。

外環道の課題

外環道は、首都圏の交通を円滑化するための重要なインフラですが、建設にあたっては多くの課題があります。

用地買収：特に都市部では、用地の取得が困難で、事業の遅延につながっています。
環境問題：トンネル工事による地盤沈下や、騒音、排気ガスなどの環境への影響が懸念されています。
財政問題：建設費用が巨額であり、財源の確保が課題となっています。

今後の展望

外環道の全線開通は、首都圏の交通状況を大きく改善すると期待されています。しかし、残された課題も多く、関係機関が連携して解決していく必要があります。

東京区間の詳細

関越道-東名高速間

1966年に都市計画決定されたものの、住民の反対運動により計画が凍結されました。その後、1999年に東京都知事が地下化案を提示し、2007年に大深度地下方式での整備が決定しました。

この区間は、関越自動車道（練馬区）から中央自動車道（三鷹市）を経て、東名高速道路（世田谷区）に至る約16キロメートルです。全線地下構造で、3つのジャンクション（JCT）と3つのインターチェンジ（IC）が設置される予定です。2012年に着工し、2020年東京オリンピックまでの完成を目指していましたが、2020年の調布市での陥没事故などにより、開通時期は未定となっています。

東名高速以南

東名高速道路から南側の区間は、具体的な計画が未定です。この区間の整備により、都心部の交通渋滞緩和に加え、災害時の緊急輸送路としての機能強化が期待されています。現在、東京都、国土交通省、川崎市が協議会を設置し、具体的なルートや構造について検討を進めています。

埼玉区間の詳細

外環道埼玉区間は、関越自動車道から埼玉県三郷市・東京都葛飾区境までの区間です。高速道路部（東京外環自動車道）と一般道路部（国道298号）が並行して整備されています。1994年までに大泉JCTから三郷JCTが開通し、首都圏の主要な高速道路が接続されるようになりました。この区間の開通により、交通の利便性が向上し、所要時間が大幅に短縮されました。

千葉区間の詳細

外環道千葉区間は、埼玉県三郷市・東京都葛飾区境から湾岸道路までの区間です。高速道路部（東京外環自動車道）が2018年に開通し、交通の利便性が向上しました。特に、首都高速道路の慢性的な渋滞緩和に貢献しています。千葉区間は、高速道路部が下段、一般道路部が上段の掘割スリット構造となっているのが特徴です。

一般道路部（国道298号）について

外環道の一般道路部の大部分は、国道298号に指定されています。ただし、全区間が国道指定されているわけではなく、一部区間は市区道や県道となっています。国道298号は、外環道の整備に伴い、沿線地域の生活道路としての機能も担っています。

まとめ

東京外かく環状道路は、首都圏の交通渋滞の緩和と、首都機能の強化のために計画された重要な道路です。現在も建設工事が進められており、今後の全線開通が期待されます。しかし、用地買収、環境問題、財政問題など、解決すべき課題も多く残されています。

関係機関が連携し、これらの課題を解決しながら、外環道の完成に向けて取り組むことが重要です。

参考文献

国土交通省関東地方整備局
東日本高速道路株式会社
* 中日本高速道路株式会社

もう一度検索