東京大学の入学試験

東京大学の入学試験：歴史、選抜方法、近年の変更点

東京大学の入学試験は、一般選抜の他に、外国学校卒業学生特別選抜や大学院入試がありますが、ここでは一般選抜と2016年度から導入された推薦入試について詳しく解説します。

歴史

戦前、旧制高等学校と帝国大学の総定員はほぼ同数で、旧制高校生は大学学部を問わなければ、どこかの帝国大学に全入できました。そのため、帝国大学の入試は現在のエスカレーター式高校からの大学学部選抜のような位置づけで、高等教育入試の主戦場は旧制高校入試でした。

旧制高校入試では、時代や学校によって異なりますが、基本的に文系は現在の4教科（外国語、国語、数学、社会）、理系も現在の4教科（外国語、国語、数学、理科）でした。試験問題も現在から見ると素朴な1行式の論述問題が主流でしたが、戦時体制に入ると思想を問う論述問題が出され、後年批判の対象となりました。

1949年以降の新制東京大学の入試は、基本的に旧制高校の入試を承継しています。募集単位も戦前の旧制高校を承継し、文科I類（法・経）、文科II類（文・教）、理科I類（理・工）、理科II類（農・医・薬・理）と学部学科単位ではなく、科類単位での募集となりました。

1962年には文科I類と理科II類が分割され、現在の科類体制となっています。入試問題は、戦時体制で思想検査に用いられた思考過程を書かせる論述式の入試問題が批判され、客観式（○×問題、穴埋め問題、選択問題、計算問題）が良いとする社会的風潮となりました。

文部省は各大学に対し入学試験に際し客観式の問題を使用するよう指導した結果、全国の大学入試から論述式の入試問題が姿を消しました。新制東京大学入学試験も、第一次試験のみならず第二次試験も、客観式の出題形式となりました。

客観式の知識問題では浪人生に有利であり、戦前からの多浪に寛容な風潮もあり、さらに新制高校進学率向上もあり、新制東京大学の入学試験は激化し、1958年には入学者のうち現役生が26%、1浪生が45%、多浪生が29%と現役生の割合が最小となりました。

その後、スプートニクショックや高度経済成長による1960年前後の理工系倍増計画や、団塊世代対策の文系定員増加による東京大学の定員増加等により東大受験は緩和され、現役生合格率は増加することとなりました。この時期の東京大学合格者に対する高校側の評価は「アタマ1割、馬力が9割」と頭より勉強量が重要であると評価されていました。

1966年からは入試科目が文系・理系で分かれることになったため、多くの公立高校で文系コース・理系コースとコースを分けるようになりました。

1960年代には一部論述問題も導入されましたが、基本的な出題傾向は1950年代から1960年代は同じでした。このような中、東京大学では1969年の大学入試中止の際に入試制度調査委員会がまとめた「入試改革についての報告書」に基づき、1971年より入試制度を大幅に改革しました。

この改革では、第一次試験を一種の「資格試験」と位置づけ、入試科目を従来の3教科から5教科に増加させる一方、問題を基礎学力を問う平易なものに変更しました。第二次試験では負担を軽減（理系の社会、文系の理科は廃止）する一方、出題形式は論述式を原則としました。この第二次試験の傾向はその後、微調整を行いつつ現在の入試傾向に継続されています。

第一次試験は、1979年の共通一次試験、1990年の大学入試センター試験利用へ承継されています。

1971年の入試改革により、同年の東大合格者の現役生の割合が前年の46.7%から55.7%に増加した一方、多浪生は前年の12.3%から9.4%に減少し、女子学生は前年の123名から170名に大幅に増加しました。

かつて保健センターが新入生全員に行っていた面接調査の結果、ノイローゼなどの要注意の学生が例年の30～40人から十数人に激減し、症状も軽くなったということです。高校側の評価も「点取り虫的な学生よりも幅広く読書をしていような学生の合格者が目立った」「模擬試験の成績はたいしてよくないが、実力がありそうだと思えた学生が合格している」と合格者の質的な変化を思わせる反応が寄せられていました。

近年の選抜方法

東京大学では学部・学科ごとの募集は行わず、6つの科類ごとに募集を行っています。他の国公立大学と同様、分離分割方式を採用しており、前期日程・後期日程（2015年まで）に分けて入学試験が行われています。以下、各日程の試験について選抜方法を解説します。

2008年度に後期日程試験の入試改革が行われましたが、前期日程試験は理科三類の面接試験廃止（2018年度に復活）を除いて、選抜方法は変更されていません。

前期日程試験

2006年度から2011年度まで、出願者は大学入試センター試験で、指定された教科目を受験しなければなりませんでした。

各類で志願者が規定の倍率を超えていた場合は、センター試験の成績を基に第一段階選抜（足切り）を行います。第一段階選抜合格者に二次試験を課します。学力試験の配点は550点満点とし、必要に応じて調査書を加えて総合判断を行います。

1999年度以来、理科三類の試験として試験日程3日目に行われていた面接試験は、2008年度の入試から廃止されました。

後期日程試験

2006年度と2007年度は、出願者はセンター試験で、指定された教科目を受験する必要がありました。前期日程試験と同様に第一段階選抜を行いますが、それ以降センター試験の成績は原則利用しません。

東京大学前期日程試験の合格者は、科類を問わず第一段階選抜不合格とみなし、後期日程試験を受験することができません。

第一段階選抜者に二次試験を課し、必要に応じて調査書やセンター試験の成績を加えて総合判定をします。理科三類は面接試験を実施し、学力試験の優秀者の中から合格者を選びます。

2008年度から2011年度まで、選抜は全科類共通で行い、合格者が入学手続きの際に理科三類以外の科類を選択することになりました。出願者はセンター試験で、指定された教科目を受験する必要がありましたが、第一次選抜（センター試験の成績による）が、基準に満たない者は不合格とみなされます。第一次選抜者に二次試験を課し、必要に応じてセンター試験の成績と調査書を加えて総合判定します。

追試験

2011年度後期試験は、東北地方太平洋沖地震の影響で追試験が加わり、かつ、諸般の事情で追試日程が再び変更されました。

2012年度以降の受験教科目変更

2012年度以降、センター試験で受験しなければならない「地理歴史」及び「公民」を一本化し、選択科目において必要数以上の教科目を受験した場合に、高得点の教科目を判定に利用するのではなく、第一解答教科目の成績を利用すると改められました。これは理科も同様です。

文科各類・理科各類・後期とも、世界史A・日本史A・地理A・政治経済（単独科目）・倫理（単独科目）・現代社会の使用が、全て不可能となりました。

文科各類前期受験者は、前年まではセンター試験で地理歴史から1科目・公民から1科目、さらに2次試験で地理歴史を2科目選ぶ必要がありましたが、地理歴史2科目だけでもセンター試験・2次試験両方の受験が可能となりました。

必要教数以上を受験した場合に高得点の科目教の点数ではなく、第一解答科目教を得点とするようにしたことと、センター試験の時間割が変更になったことから、文科各類前期日程の理科や理科各類前期日程の地理歴史・公民および理科など、下記の教で「保険」をかけることができなくなりました。

2014年度前期日程からは、外国語の選択方法が変更され、ロシア語とスペイン語がなくなり、英語選択者のみ選択問題を解答可能となりました。

2015年度の受験科目変更

学習指導要領の変更に伴い、2015年度に受験科目が変更されました。文科各類前期・後期受験者は、センター試験の理科の選択は1科目だったのが2科目となり、理科各類受験者は、センター試験の理科で「II」に該当する科目が必須となりました。

2016年度の受験科目変更

学習指導要領の変更に伴い、2016年度には推薦入試が導入され、後期日程は廃止となりました。

2021年度以降の大学入学共通テストの英語の配点変更

外国語の英語において、大学入試センター試験では筆記のみ（200点満点）を課していましたが、2021年より実施される大学入学共通テストではリーディングとリスニングの両方を課し、リーディングを100→140点満点、リスニングを100→60点満点に換算する方式に変更しました。

入試問題に関する情報

史上最も難しい大学入試問題

数学において、グラフ理論のグラフ操作を扱った問題が1998年の後期入試で出題されたことがあります。特に、棒状グラフ（パスグラフ）の頂点の色が全て白になるnの必要十分条件を求める問題は、数学オリンピックで出されたとしても難問とされるレベルで、専門塾講師からも史上最も難しい国内大学の入試問題と評されています。

この問題は、必要条件の証明が難解であり、出題された当時は大手予備校でも解答速報を当日に出すことができず、翌日でも解けなかったらどう対応するべきかが話し合われたという逸話が残っています。

東京大学の入学試験は、時代とともに変化を遂げてきましたが、常に高いレベルの学力を求める試験であることに変わりはありません。

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