東京大学誕生日研究会レイプ事件

東京大学誕生日研究会レイプ事件とは

2016年、東京大学の学生5人によって引き起こされた強制わいせつ・暴行事件。この事件は、名門大学の学生が関与したこと、そして事件後に被害者女性に対する中傷が相次いだことから、社会的に大きな注目を集めました。

事件の経緯

2016年4月、東京大学工学部の学生たちが「東京大学誕生日研究会」というサークルを設立しました。表向きは学生間の交流を目的としていましたが、実際には女性に酒を飲ませてわいせつな行為をするためのサークルでした。メンバーは以前にも別の女性に同様の行為を繰り返しており、日常的に女性を性的対象として扱う発言をしていたとされています。

5月10日、メンバーは池袋の居酒屋で飲み会を開催し、被害者女性を含む2人の女性を呼び出しました。メンバーは被害者女性に無理やり飲酒をさせ、酩酊状態になったところで、メンバーの所有するマンションへ移動させ、さらに飲酒を強要しました。

意識が朦朧とした被害者女性に対し、メンバーは衣服を剥ぎ取り、胸や尻を触る、体を蹴るなどの暴行を加えました。さらに、割り箸を肛門に突き刺したり、ドライヤーの熱風を女性器に当てるなど、執拗に嘲弄を繰り返しました。同席していた別の女性が警察に通報しようとしたことで、事態は発覚に向かいました。被害者女性は半裸の状態で逃げ出し、公衆電話から警察に通報、メンバーの一人が逮捕されました。

公判と処分

この事件では、マンションを提供した者を含め5人が逮捕され、全員が東京大学の学生でした。うち2人は被害者との示談が成立し不起訴となりましたが、残る3人は強制わいせつと暴行の罪で起訴されました。

公判では、被告の一人が「女性は下心があって近づいてくる」と考えるようになり、女性を軽蔑するようになったと供述しました。また別の被告は、他の大学の女子学生を「頭が悪い」と見下し、性的な目で見ていたと述べています。

2016年秋、起訴された3人は有罪判決を受けました。判決では、主犯格の被告に対して「犯行は執拗で卑劣」と厳しく指摘され、「被害者が受けた屈辱感と恐怖感は甚大であり、学生の悪ふざけと評価することは到底できない」と述べられました。東京大学は判決後、不起訴となった2人を停学、有罪判決を受けた3人を退学処分としました。

社会的影響

事件発生直後から、インターネット上では「合意の上だったのではないか」「男性が気の毒だ」といった被害者を批判する声が多く見られました。特にSNS上で著名人が「お互い了承済み」「ついていく女も悪い」と投稿したことで、被害者に対する非難がさらに広がりました。

2018年には、この事件をモチーフにした小説『彼女は頭が悪いから』が発表され、大きな話題を呼びました。この小説は、事件の報道や公判記録をもとに、被害者・加害者双方の生い立ちを遡り、事件の背景や関係者の心理を描いています。

2019年には、社会学者の上野千鶴子が東京大学の入学式でこの事件に触れ、大学内にジェンダーに対する偏見が残っていることを示唆しました。

関連情報

高橋ユキ「東大生集団わいせつ事件　『頭の悪い女子大生は性的対象』という人間の屑たち」（『新潮４５』２０１６年１１月号）
矢口祐人『なぜ東大は男だらけなのか』集英社新書、2024
ジョン・クラカワー（菅野楽章訳）『ミズーラ ─ 名門大学を揺るがしたレイプ事件と司法制度』亜紀書房、2016

関連項目

彼女は頭が悪いから（事件に着想を得て2018年に書かれた小説）
不同意性交等罪（2023年7月施行の改正刑法で新設された罪名）
スーパーフリー事件
京都大学アメフト部レイプ事件
慶應義塾大学広告学研究会レイプ事件
* 同志社アメフト部性的暴行事件

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