東京市場駅

東京市場駅

東京市場駅（とうきょうしじょうえき）は、かつて東京都中央区築地に存在した日本国有鉄道（国鉄）の貨物駅です。汐留駅から分岐していた東海道本線の貨物支線の終端に位置し、電報略号は「トシ」が使用されていました。

概要と歴史

当駅は、1935年2月11日に開設されました。これは、駅のすぐ隣にあった東京都中央卸売市場築地市場が開場した日と同じであり、市場へ鉄道で鮮魚や青果などを輸送するために開設された駅でした。

汐留駅から東京市場駅までの貨物支線は全長約1.1 kmの単線で、駅自体は地上駅として建設されました。線路は築地市場の外周に沿って緩やかなカーブを描いて敷設されており、市場の建物に面した線路脇には、プラットホームのような構造が設けられていました。これにより、貨車から市場へ直接荷物を降ろすことが可能で、降ろされたその場で競り（大卸）が行われていたのが特徴です。一度に最大40両のワム形貨車から荷役作業を行う能力を持っていました。

主な取扱品は、築地市場を発着する水産物、青果物といった生鮮食料品に特化していました。全国各地から新鮮な食材を鉄道で運び込む重要な拠点であり、1966年10月のダイヤ改正以降は、高速運転に対応した新型冷蔵車であるレサ10000形を使用した特急貨物列車も運行されました。九州・中国地方から鮮魚を運ぶ「とびうお」や、北海道・三陸地方からの「とうりん」などが代表的な列車でした。

しかし、時代の変化とともに、トラック輸送の普及や高速道路網の発達が進み、鉄道による生鮮食料品の輸送量は徐々に減少していきました。このため、東京市場駅の重要性は薄れ、1984年2月1日には駅としては廃止され、設備は隣接する汐留駅の構内扱いとなりました。さらにその約3年後、1987年1月31日には、DE10形ディーゼル機関車1553号機に牽引された列車を最後に、築地市場への鉄道による貨物輸送は完全に終了しました。

廃止後の状況

駅や貨物支線の線路は撤去されましたが、市場内にあったプラットホームなどの一部設備は、築地市場の卸売場の一部として引き続き利用されました。これらの設備は、築地市場が豊洲へ移転し閉場する2018年までそのまま残されていました。

貨物支線の跡地は道路に転用されています。かつて都道316号線との交点にあった「浜離宮前踏切」の警報機部分は、鉄道遺構として現在もモニュメントとして保存されています。一方、首都高速都心環状線（かつての築地川）を跨いでいた鉄橋は撤去され、同じ場所に新たに道路橋である「新尾張橋」が架けられています。

年表

1935年（昭和10年）2月11日：開業。日本国有鉄道の貨物駅として開設されました。
1957年（昭和32年）4月1日：急行小口扱貨物およびトン扱貨物の取扱が廃止されました。
1959年（昭和34年）10月10日：標準パレットの取扱駅となりました。
1974年（昭和49年）10月1日：営業範囲が改正され、小荷物と車扱貨物（東京都中央卸売市場発着のものに限る）の取扱を開始し、一般駅となりました。
1978年（昭和53年）12月1日：汐留駅との間の旅客（荷物）運輸営業が廃止され、荷物の取扱も終了。営業範囲が再び車扱貨物（東京都中央卸売市場発着のものに限る）のみとなり、貨物駅に戻りました。
1984年（昭和59年）2月1日：東京市場駅が廃止され、以降は汐留駅構内扱いに変更されました。
1986年（昭和61年）10月26日：汐留駅の廃止記念列車として、東京市場から和式客車「江戸」などを使用した「さよなら つきじ市場号」が運転されました。
1987年（昭和62年）1月31日：貨物列車の運行が終了し、鉄道による築地市場への輸送の歴史に幕を閉じました。

隣の駅

日本国有鉄道 東海道本線 貨物支線： 汐留駅 - 東京市場駅

（この貨物支線は当駅が終点でした）

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