東京座

東京座：明治の華、幻の歌舞伎劇場

東京座は、明治時代に東京の神田三崎町に存在した歌舞伎劇場です。200席の客席を持ち、当時、歌舞伎座や明治座と並び、東京五大劇場の一つとしてその名を轟かせていました。この劇場は、明治30年（1897年）3月に開場し、その短い歴史の中で、多くの著名な役者たちが舞台を踏み、数々の名演を繰り広げました。今日では、その存在を知る人は少ないですが、明治期の演劇界を語る上で欠かせない重要な劇場でした。

開場から閉鎖までの軌跡

東京座は、開場当初、五代目市川寿美蔵を座頭に迎え、九代目市川団十郎門下の役者たちによる芝居を上演しました。また、上方からは実川延二郎（後の二代目実川延若）や中村雀三郎といった役者も出演し、観客を魅了しました。団菊（九代目市川団十郎と五代目尾上菊五郎）の没後には、五代目中村芝翫（後の五代目中村歌右衛門）が新派劇に対抗し、徳冨蘆花原作の「不如帰」や菊池幽芳原作の「乳姉妹」といった話題作を上演しました。さらに、坪内逍遥作の「桐一葉」を明治37年（1904年）に初演し、同じく逍遥作の「牧の方」も上演するなど、当時の演劇界に大きな影響を与えました。また、初代市川猿之助も金主としてしばしば出演し、劇場を盛り上げました。

しかし、東京座は、大正5年（1916年）1月、片岡松之助による義士劇の上演を最後に閉座しました。その短い歴史の中で、東京座は多くの名優たちを輩出し、日本の演劇史にその名を刻みました。閉座から100年以上が経過した今でも、その足跡は、歌舞伎史研究の中で重要な位置を占めています。

東京座の意義

東京座は、単なる劇場としてだけでなく、当時の演劇界の動向を映し出す鏡のような存在でした。新派劇に対抗する歌舞伎の上演や、坪内逍遥といった演劇革新者の作品の上演など、時代を先取りするような取り組みを行っていました。また、市川猿之助のような個性的な役者を惹きつけ、その才能を最大限に引き出す舞台でもありました。東京座は、当時の演劇界の多様性と活気を象徴する存在であり、日本の演劇史において重要な役割を果たしたと言えるでしょう。

参考資料

この項の記述は、以下の文献を参考にしました。

『歌舞伎事典』服部幸雄他編、平凡社、阿部優蔵執筆の項

関連情報

三崎三座

外部リンク

* 1906年の東京座

まとめ

東京座は、明治時代にその短い生涯を終えた歌舞伎劇場です。しかし、その歴史は、当時の演劇界を深く理解する上で欠かせない貴重な記録です。多くの名優たちがこの舞台に立ち、観客を魅了しました。今日では、その存在を知る人は少ないかもしれませんが、東京座は、日本の演劇史において重要な役割を果たした劇場の一つとして、記憶されるべきです。

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