東京葺手町教会

東京葺手町教会

東京葺手町教会（とうきょうふきてちょうきょうかい）は、日本の近代キリスト教史において重要な一歩を記した教会の一つです。スコットランド一致長老教会の宣教師として来日したヒュー・ワデルらが中心となり創設され、現在の日本基督教団に属する芝教会の歴史的な源流として位置づけられています。

設立の歩み

この教会の設立は、まず宣教師ヒュー・ワデルの教育活動から始まりました。ワデルは明治維新後の日本、具体的には1876年に、当時葺手町と呼ばれていた地域（現在の東京都港区虎ノ門四丁目界隈）に私塾を開設しました。この塾は「ワデル塾」として知られ、単なる語学教育にとどまらず、キリスト教の教えにも触れる場であったと考えられます。やがてこの私塾を母体とする形で、教会の設立に向けた具体的な準備が1878年頃から進められるようになりました。

当時の様子を伝える資料の一つである『七一雑報』第37号には、設立準備段階における会員構成に関する記述が見られます。それによると、この時期すでに男性18名、女性8名、子供3名、さらに伝道志願者として渡辺勝の名が挙げられており、合計30名近い人々が教会の形成に関わっていたことがうかがえます。

教会の正式発足

そして、念入りな準備期間を経て、東京葺手町教会は1879年3月29日に正式にその産声を上げました。この設立総会においては、38名の会員を擁し、初代の役員として長老1名、執事1名が選出されました。これにより、ワデルの教育活動から始まった集まりは、近代日本における長老派教会の一つとして、公的な歩みを始めることになったのです。

その後の発展と合流

教会は設立後、活動の場を移し、名称も変更していきます。設立から数年後の1883年7月には、虎ノ門の地へ移転し、「虎ノ門教会」と改称しました。これは単なる場所の変更だけでなく、教会の発展に伴う組織的な変化を示すものでもありました。

さらに翌年の1884年には、虎ノ門教会は近隣で活動していた芝露月町教会（しばろげつちょうきょうかい）と合同する重要な転機を迎えます。この二つの教会が一つになることで、「芝教会」が新たに誕生しました。芝教会は、その後も日本のキリスト教史の中で歩み続け、現在の日本基督教団に属する芝教会へと続いています。東京葺手町教会として始まった流れは、虎ノ門教会を経て芝教会へと発展し、今日までその信仰と活動を受け継いでいるのです。

東京葺手町教会は、その短い歴史の中で名称と場所を変えながらも、明治初期におけるプロテスタント教会の確立と発展に寄与した重要な存在であり、日本基督教団芝教会の確かな礎を築いた教会として記憶されています。

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