東京農業大学ワンダーフォーゲル部死のシゴキ事件

東京農業大学ワンダーフォーゲル部死のシゴキ事件

1965年5月、新人部員を集めた東京農業大学ワンダーフォーゲル部の山行中に、暴行が原因で重大な事件が発生した。この事件は、農大ワンゲル部の伝統である厳しい訓練が引き起こした悲劇で、集団傷害致死や傷害事件に発展した。

事件の概要

事件は、1965年5月15日から18日にかけて行われた「新人錬成山行」で起こった。この山行には監督や上級生たちが参加し、新人部員たちに対する過酷な訓練が行われた。この期間中に、暴行が発覚し、1名の新人部員が死亡、2名が重傷を負い、残りの部員も肉体的および精神的な苦痛を受けることとなった。

農大ワンゲル部の背景

農大ワンゲル部は、1956年に同好会として始まり、58年に部に昇格。部は高度な山岳活動を行ってきたが、その活動には体罰が常態化していた。特に新人部員に対する「シゴキ」と称された体罰は、厳しい言葉や肉体的な暴力を伴うもので、年々厳しさを増していた。

体罰の実態

秋ごろから行われる訓練には、重い荷物を持たせ、厳しく叱責することが盛り込まれていた。シゴキは新入部員だけでなく、先輩たちにも及び、新人への暴力は本事件の背後にあったことが明らかになっている。暴行は肉体的なものにとどまらず、精神的な苦痛も引き起こしていた。実際、暴行を受けた部員の一人は「辛さのあまり山中で投げ出したい気持ちになった」証言を残している。

事件の経緯

5月15日夜、新宿駅から山行を開始し、翌日16日には標高の高い地点に移動。出発から数日間にわたり、新人部員は重い荷物を持たされ、殴打され続ける過酷な訓練が施された。特に5月17日には体罰が激化し、各所で暴行が目撃されていた。新人部員は次第に疲労し、暴力にさらされる様相を呈していた。

最終日には、体力を失った新人部員X1がついに倒れてしまい、周囲の先輩たちによる暴力が続いた結果、死亡に至った。X1は帰宅後に急変し、21日に入院、そのまま22日に死亡。これにより、事件が警察に通報され、大規模な捜査が始まった。

事件後の対応

事件を受け、東京農業大学はワンダーフォーゲル部を解散。加害者には逮捕状が次々と発出された。部長や上級生は懲役判決を受けることとなり、社会的な反響が巻き起こった。事件に関連した訴訟が進行する中で、類似の事例に対する問題提起も高まっていった。

国のスポーツ活動における体罰の存在についても再考が促され、大学全体での見直しが求められることになった。

社会的影響

本事件によって、大学内での体罰や暴力行為が議論されるようになり、大学における体育教育や部活動のあり方に対する根本的な問題提起につながった。また、メディアでも取り上げられ、学生の権利や安全に関する問題が広く知れ渡ることとなった。

この事件は、今なお大学における運動部の体罰問題の象徴として語られ続けている。

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