東京NEWS

『東京NEWS』とは

『東京NEWS』は、東京メトロポリタンテレビジョン（TOKYO MX、開局当時の通称はMXTV）が、1995年 11月1日の開局から1999年 3月31日まで、約3年半にわたって放送したローカルニュース番組枠全体の呼称です。

東京都を放送対象地域とする新たな民放局として誕生したTOKYO MXは、開局当初から極めて特徴的な試みとして、ローカルニュースを1日に12時間以上も放送するという、日本の他の独立テレビ局には見られない長時間編成を採用しました。この独自の報道体制が「東京NEWS」と総称されました。

構想の背景と革新性

この画期的な編成は、当時のゼネラル・プロデューサーであった村木良彦氏の発案によるものです。

村木氏は、首都東京における最後発のテレビ局として、また潤沢なコストをかけられない状況下で、いかに存在感を示すかを深く考察しました。その結果、常に新しいローカル情報を発信し続けるスタイルを確立すること、そして村木氏自身の映像記録の経験をヒントに、変わりゆく東京の「今」を映像として継続的に蓄積していくという構想に至りました。このアイデアは、東京都や当時の郵政省からも強い支持を得ていました。

開局当時のTOKYO MXには、地上波テレビ放送の専門家が少なかったため、経験豊富な村木氏がゼネラル・プロデューサーとして迎え入れられ、彼の指揮のもと、このニュース中心路線が局の基幹戦略となったのです。

村木氏は、多忙な現代社会において「ゴールデンタイムを視聴者にお返しする」という考えを示し、視聴者がライフスタイルに合わせていつでも最新のニュースに触れられるよう、1日に何度もニュースを放送する編成を採りました。24時間放送体制を導入したのも、この理念に基づくものでした。村木氏は後に、理想としてはニュースのみで24時間放送も可能だったと考えていたと振り返っています。

番組の構成と取材体制

『東京NEWS』は、1日を早朝、昼、夕方、夜間、深夜の5つのブロックに分けて放送されていました（一部、東京都提供の『スクエア1200』内の4:3画面を除き、レターボックス16:9のワイド画面に対応していました）。各時間帯にはそれぞれ異なるオープニング映像が用意され、特に夜の主要ニュース枠ではフルCGを用いた力の入った演出が施されていました。

番組内容は、国内外の最新ニュースに加えて、東京都内のローカルニュースを重点的に取り扱いました。23区はもちろん、多摩地区や伊豆諸島を含む都内全域にきめ細かい取材ネットワークを構築し、都庁、警視庁、当時の本社があったテレコムセンターなど、都内各所からのニュースを大小問わず積極的に報道しました。

「映像記者」と先進技術の導入

『東京NEWS』を特徴づけたもう一つの大きな要素は、「映像記者（ビデオ・ジャーナリスト）」制度の導入です。通常、テレビニュースの現地取材は、レポーター、カメラマン、ディレクターなど複数のスタッフで行われますが、TOKYO MXでは当初23名の映像記者が、原則として取材、撮影、そして最終的な編集作業までを一人で担当しました。これは日本の地上波放送局としては初めて本格的に導入された画期的なシステムでした。

この映像記者制度を技術面で支えるため、TOKYO MXは当時としては最先端のデジタル技術を積極的に導入しました。映像の劣化を防ぎ、取材時の鮮度を維持できる「ノンリニア編集システム」や「デジタルニューズギャザリング」といった技術を、世界の主要な報道機関とほぼ同時に、あるいは先行して取り入れたとされています。

多様なコーナー展開

東京都内のニュースの合間には、様々な情報コーナーが挿入されました。ピンポイント予報を含む天気予報や道路交通情報のほか、東京都提供の『スクエア1200』（その中に『TOKYOインフォメーション』『あなたの街から生中継』『生活ガイドとうきょう』『都政出前講座』など）、『scene』、『みんみん情報局』といったコーナーがありました。当初独立番組だった『防災×365』も、後に5分間のコーナーとして組み込まれています。

また、開局当初は、週末から週明けにかけて、東京近郊に居住する外国人向けのニュース番組『東京NEWSウイークリー』（後に『ZERO IN』に改題）を編成しました。これは英語、中国語、韓国語、ポルトガル語で各15分放送され（副音声で日本語も）、その後のInter FM開局へと繋がる多言語放送の礎となりました。後に、日本語で一週間のニュースをまとめて伝える『ウィークリー東京NEWS』に改編されています。

年末には『東京NEWSスペシャル』として長時間放送を行い、映像記者が総出演するといった特別な編成も行われました。

変質と終焉

しかしながら、長時間ニュース中心の編成は、一部視聴者から飽きられたり、編成上の柔軟性を欠くといった批判も生じました。さらに、局内の不祥事や株主の反発による経営状況の悪化が重なり、番組内容の大幅な改革が避けられなくなりました。

末期（1998年頃から）には、ワイド画面放送を取りやめ、早朝には文字ニュースが登場するなど、編成は変化しました。ニュース枠とは名ばかりで、実質的には独立した様々なVTRコーナーを寄せ集めたコンプレックス番組のような状態になっていきました。

構想の中心人物であった村木良彦氏も、開局からわずか1年後の1996年6月30日をもってゼネラル・プロデューサーを辞任しています。本人の弁によれば「追われるように」の辞任だったとされています。

1997年4月には、テーマ音楽やコーナー構成などが大幅に見直され、朝の時間帯はフォーマット放送形式となりました。朝のコーナーオープニング音楽には、他局で使われたことのある楽曲が転用される例も見られました。

そして、1999年4月の改編において、TOKYO MX全体の報道枠が大きく縮小・再編されました。早朝は『白沢みきのモーニングTOKYO』、日中は定時スポットニュース、夕方は『イブニングTOKYO』、そして夜間は『東京NEWS21時』といった個別の番組に移行しました。この再編により、『東京NEWS』という呼称が特定の時間帯（21時台）の番組名としてのみ残る形となり、ニュース枠総称としての『東京NEWS』はその役割を終え、事実上終了したと位置づけられます。その後の報道番組は『TOKYO MX NEWS』などへと引き継がれていきました。

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