東仙台球場

東仙台球場（ひがしせんだいきゅうじょう）は、かつて宮城県仙台市宮城野区東仙台にかつて存在した野球場です。日本たばこ産業（JT）の関連会社が所有していたため、旧称は「JT球場」として知られていました。短期間ではありますが、2005年から2006年の2年間は仙台市に貸し出され、市の施設として市民に供用されました。しかし、その役割を終え、2006年10月をもって閉鎖されました。

JT球場としての歩み

この球場の歴史は、日本専売公社（JTの前身）仙台工場の敷地内に、職員の福利厚生施設として開設されたことに始まります。当初は軟式野球などを目的としたグラウンドでしたが、1980年に専売公社の東北支社と仙台工場の軟式野球部が統合され、専売公社東北硬式野球部（後にJT硬式野球部）が誕生したことを機に、硬式野球に対応できるよう改修が施されました。設立当初の野球部員たちは、日々の練習がグラウンドから石を拾うことから始まったという逸話も伝えられています。

1988年にはメインスタンドが完成し、収容能力が向上しました。これにより、社会人野球や高校野球といったアマチュア野球の公式戦会場としても利用されるようになり、地域の野球振興に貢献しました。しかし、JTの事業再編の一環として、2003年3月には仙台工場が閉鎖されることとなりました。硬式野球部自体は工場閉鎖後も活動を継続しましたが、合理化の波には抗えず、2004年をもって廃部となりました。

その後の展開と東仙台球場への改称

一方、2004年オフにプロ野球界に新規参入した東北楽天ゴールデンイーグルスは、本拠地を宮城球場（現在の楽天モバイルパーク宮城）に定めることになりました。楽天球団はJT仙台工場の広大な敷地を練習施設として整備することを検討しましたが、野球関連施設の一部のみを取得したい楽天側と、約12万平方メートルに及ぶ敷地全体を一括して売却したいJT側との間で条件が折り合わず、楽天はJT敷地の購入を断念せざるを得ませんでした。楽天はその後、2005年は二軍の本拠地を山形県近郊に置き、翌2006年には仙台市泉区に専用の練習施設を整備しました。

宮城球場が楽天の本拠地となったことで、プロ野球の公式戦開催が大幅に増加しました。その結果、仙台市およびその周辺地域では、硬式野球が可能な球場が不足するという課題が生じました。仙台市は当時、宮城野区内に新たな市民球場（現在の仙台市民球場、2007年開場）の整備を計画していましたが、完成までの間、アマチュア野球の公式戦や練習に使用できる代替施設を確保する必要に迫られました。そこで仙台市は、JTから旧JT球場を借り上げ、市の施設として運営することを決定しました。JT側と2005年から2年間の賃借契約を締結し、同時に球場名を「東仙台球場」に改称しました。こうして2005年と2006年の2年間、東仙台球場は市の施設として利用され、アマチュア野球の活動を支えました。この期間中、楽天イーグルスも不定期に試合前の練習などに使用することがありました。新市民球場が完成に近づいた2006年10月をもって、東仙台球場は閉鎖されました。

閉鎖後の再開発

球場閉鎖後、JT仙台工場跡地には大規模な再開発計画が持ち上がりました。2006年2月には、JTがイトーヨーカ堂と跡地の売却に合意し、大型商業施設を建設する計画が進められました。しかし、近隣に既に大型商業施設が存在していたことから、仙台市はオーバーストア化や交通渋滞の悪化を懸念し、商業施設主体での開発に対する難色を示し、土地の用途変更を認めませんでした。結果として、イトーヨーカ堂は同年11月に出店と土地購入を断念しました。

仙台市はJTに対し、住宅地としての再開発を推奨しました。これを受け、2007年5月には跡地の用途が工業地域から住居地域に変更される手続きが行われました。JTは同年6月から入札方式による跡地の売却を開始し、球場や室内練習場、さらに市道敷地の一部を含む物件をそのまま引き渡す方針を示しました。同年8月23日に行われた入札では、大和ハウス工業が推定約60億円で落札し、9月に物件の譲渡が完了しました。大和ハウス工業は、跡地に複数のマンション、一般住宅、そして中小規模の商業施設を整備する開発計画を策定しました。跡地に残されていた建築物は、同年秋から2008年春にかけて順次撤去されました。

大和ハウス工業はこの再開発事業の愛称を「せんだい宮の杜」と定め、2009年6月から各種建築物の建設と宅地の造成を開始しました。まず、郊外型複合商業施設である「フォレオせんだい宮の杜」が先行してオープンし、核店舗のケーズデンキなどが同年11月に開業しました。翌2010年には、住宅地区画である「ブルームスクエアせんだい宮の杜」の街開きが行われ、かつての球場跡地は新たな街として生まれ変わりました。

施設概要（閉鎖時点）

両翼：95メートル、中堅：120メートル
グラウンド：内野はクレー舗装、外野は天然芝でした。
収容人員：バックネット裏のみに観客席があり、収容人員は770人でした。
スコアボード：パネル式でしたが、得点表示とチーム名部分は電光式でした（チーム名はアルファベット1文字表示）。
* 照明設備：ありませんでした。

交通アクセス（閉鎖時点）

JR仙石線・陸前原ノ町駅から徒歩約15分程度の場所に位置していました。

東仙台球場は、その短い歴史の中で、JT硬式野球部の拠点として、また新市民球場完成までの間、地域のアマチュア野球活動を支える重要な役割を果たしました。現在その場所は新たな生活と商業の中心地へと変貌しています。

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