JT硬式野球部

宮城県仙台市に拠点を置いていたJT硬式野球部は、かつて日本野球連盟に加盟していた社会人野球の有力な企業チームでした。日本たばこ産業を母体とするこのチームは、個性豊かな選手たちが集まるチームとして知られ、東北地方における社会人野球の強豪として全国でも存在感を示しました。

創部と初期の歩み

チームの始まりは1980年。当時の日本専売公社の東北支社と仙台工場にあった軟式野球部が統合され、硬式野球部へと再編されたことで誕生しました。創部当初は「日本専売公社東北硬式野球部」、通称「専売東北」として活動を開始。比較的早い段階で力をつけ、創部からわずか3年後の1983年には、社会人野球の主要大会の一つである日本選手権大会に初めて駒を進めています（初戦敗退）。

1985年4月1日には、親会社である日本専売公社が民営化され、日本たばこ産業が発足。これに伴い、チーム名も「日本たばこ東北硬式野球部」へと変更されました。

強豪への道と黄金期

チームはその後も着実に強化を進め、1988年にはチーム名を再度変更し「日本たばこ硬式野球部」となります。この年は記念すべき年となり、社会人野球最大の祭典である都市対抗野球大会に初めて出場。初出場ながら並み居る強豪を破り、見事ベスト8まで勝ち進む活躍を見せました。また、この年にはチームの専用練習グラウンドであるJT球場が仙台工場の敷地内に竣工しています。

翌1989年にはチーム名が最終的に「JT硬式野球部」へと改称。この時期からJTは東北地方における社会人野球界を代表する存在となり、都市対抗野球大会や日本選手権大会といった全国規模の大会に連続して出場する、まさに「全国大会の常連」となりました。特に1991年の日本選手権大会では、チーム史上最高成績となるベスト4に進出するなど、全国の舞台でその実力を見せつけました。

チームには、創部から廃部まで23年間という長きにわたりチームを支え続けた外野手の原野優氏のような、強烈な個性を持つ選手が多く在籍しており、「ミスターJT」として親しまれた原野氏のように、チームの象徴となる存在も生まれました。

廃部の決定、そして最後の輝き

しかし、日本たばこ産業を取り巻く経営環境の変化、特にたばこ需要の減少は、親会社のスポーツ部門の再編へと繋がり、チームの存続にも影響を及ぼします。そして、2003年にチームの本拠地の一つでもあった仙台工場が閉鎖されたことに伴い、翌2004年シーズン限りでの廃部が発表されました。長年の歴史を持つ強豪チームの突然の廃部決定は、多くの関係者やファンに衝撃を与えました。

廃部が決まった2004年は、チームにとって特別なシーズンとなりました。最後の夏となった都市対抗野球大会では、主催者による特例措置として設けられた理事会推薦特別枠により、東北第3代表として本大会への出場権を獲得します。この「最後の都市対抗」にすべてを懸けた選手たちは、快進撃を展開。同じ東北代表である七十七銀行とともに勝ち上がり、見事ベスト4まで進出するという劇的な活躍を見せ、「東北旋風」と称賛されました。これが、JT硬式野球部の公式戦における有終の美となりました。

チームの練習拠点であったJT球場は、チーム廃部後、2005年から「東仙台球場」と名称を変え、市の施設として一般利用もされていましたが、残念ながら2006年限りで閉鎖されています。

チームを彩った人々

JT硬式野球部からは、プロ野球界へと羽ばたいた選手も誕生しています。主なOBとしては、投手の佐藤誠一氏（退部後、日本ハム練習生を経てドラフト指名）や、同じく投手の古溝克之氏（阪急ブレーブスからドラフト指名）などが挙げられます。

また、前述の「ミスターJT」こと原野優氏や、廃部後もJTに勤務しながら社会人クラブチームでプレーを続けた内野手の江井康胤氏など、チームの歴史を語る上で欠かせない選手たちが数多く在籍していました。

創部から廃部までの約25年間、JT硬式野球部は東北地方の社会人野球を牽引し、多くの個性的な選手を輩出しながら、全国の舞台で記憶に残る戦いを繰り広げました。惜しまれつつ幕を閉じたその歴史は、今も社会人野球ファンの心に刻まれています。

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