東利夫

東 利夫（あずま としお）氏は、1960年4月6日に奈良県桜井市で生を受けました。野球人としてのキャリアは、地元の桜井商業高校で捕手としてスタートしました。高校時代には、後にプロ野球で活躍する駒田徳広氏とバッテリーを組んだ経験も持ちます。1978年夏の県予選では準決勝まで進出しましたが、惜しくも敗退。同年オフ、ドラフト外で阪神タイガースに入団し、プロ野球の世界へ足を踏み入れました。

プロ入り後は内野手へ転向しましたが、一軍公式戦への出場機会は得られず、1985年限りで現役を引退しました。選手時代の背番号は「66」でした。

選手としてユニフォームを脱いだ後、東氏はプロ野球審判員としての新たな道を選びました。1986年にパ・リーグ審判部に入局し、袖番号「6」を着用することになりました。この番号は、かつて審判として活躍し、1985年に亡くなった加藤昌利氏が使用していたものです。審判としての初出場は、1987年4月12日、阪急対南海の試合での左翼外審でした。

長年にわたりグラウンドに立ち続け、多くの試合で的確なジャッジを下しました。審判としての通算出場試合数は2630試合（2017年シーズン終了時点の内訳はパ・リーグ2108、セ・リーグ261、交流戦187、日本シリーズ40、オールスター10、クライマックスシリーズ24）に及びます。特に、プロ野球の祭典であるオールスターゲームには5回（1991年、1994年、2000年、2010年、2015年）出場し、うち2回（1991年第1戦、1994年第2戦）で球審を務めました。また、日本シリーズには10回（1996年、1999年、2002年から2007年まで6年連続、2011年、2014年）出場しており、重要な第1戦（1999年、2011年、2014年）や最終決戦となった第7戦（2003年）などで球審を担当するなど、数々の大舞台を経験しました。現役時代の選手名簿によれば、185cm・80kgと大柄な体格でした。

審判キャリアの中で、記憶に残るエピソードも多くあります。1989年10月12日、西武ライオンズ球場で行われた西武対近鉄のダブルヘッダーでは、近鉄のラルフ・ブライアント選手が驚異的な連続ホームランを放った試合で、第1試合で一塁塁審、第2試合で左翼線審を務めました。また、2007年4月8日のオリックス対西武戦では、オリックスのテリー・コリンズ監督を退場させたことでも知られます。これは監督就任後わずか13試合目での退場という、当時の日本プロ野球における早期退場記録を更新する出来事でした。

2008年10月1日、京セラドーム大阪で行われたオリックス対ソフトバンクのシーズン最終戦では、現役最後の打席を迎えた清原和博選手の球審を務めました。三振に倒れた清原選手に、東氏は空振りしたボールを直接手渡すという粋な計らいを見せ、多くのファンの感動を呼びました。

キャリアの節目となる記録も達成しています。2010年8月5日、楽天対ロッテ戦で三塁塁審を務め、パ・リーグ史上28人目となる通算2000試合出場を達成。さらに、2016年5月7日には阪神対ヤクルト戦で二塁塁審を務め、通算2500試合出場に到達しました。

審判組織においても要職を歴任しました。2009年に副部長に昇進し、2010年には審判部副部長（パ・リーグ担当）、2011年からはクルーチーフ、2016年からは審判長補佐を務めました。2017年シーズンをもって審判員としての現役を退きましたが、その後もプロ野球に貢献を続けました。2018年シーズンからはシニアディレクター兼審判技術指導員となり、2021年からは名称変更によりスーパーバイザー（関西担当）として、後進の指導や技術向上に尽力しました。

しかし、2015年9月12日の阪神対広島戦で三塁塁審および責任審判を務めた際には、延長12回に広島の田中広輔選手が放った本塁打性の打球を巡って、ビデオ判定の結果インプレーと判定しましたが、実際にはフェンスを越えていたことが後に判明し、日本野球機構側が誤審を認めて謝罪するという出来事もありました。

2024年をもって、スーパーバイザーの職からも退き、長きにわたるプロ野球での活動に終止符を打ちました。

＜記録は2017年シーズン終了時点＞

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