東北電力名取スポーツパーク愛島球場

東北電力名取スポーツパーク愛島球場（とうほくでんりょくなとりスポーツパークめでしまきゅうじょう）は、かつて宮城県名取市、東北電力名取スポーツパークの一角に位置していた野球場です。一般には愛島球場という通称で知られていました。この施設は東北電力が所有しており、運営管理は子会社の名取スポーツパーク企画が担っていました。

当球場は1998年（平成10年）に完成しました。当初は東北電力の社員向け福利厚生施設の一部として整備されましたが、後に一般にも広く開放され、地域住民に利用されていました。宮城県内に存在する野球場の中で、当時の宮城球場（現在の楽天モバイルパーク宮城）や仙台市民球場を除けば、選手名を電光表示できる機能を備えていたのは愛島球場だけであり、その点でも特徴的な存在でした。

施設概要

球場の基本的なスペックは以下の通りです。

両翼：98m
中堅：122m
内野：クレー舗装
外野：天然芝

スコアボードは磁気反転式を採用していました。10回までの得点と合計点が表示可能で、チーム名および選手名は漢字3文字または半角カタカナ6文字まで表示できました（ひらがなや他の漢字は不可）。

照明設備は6基設置されていました。最大照度は内野が1000Lx、外野が500Lxでした。老朽化による安全上の問題から、2011年3月末に使用が廃止される予定でしたが、東日本大震災による被災・営業中断により、事実上2011年3月11日をもってナイター設備は使用停止となりました。

収容人員は8,807人でした。内野席がベンチ席で1,807人、外野席が芝生席で7,000人という構成でした。

利用状況

開場以来、当球場では多岐にわたる野球の公式戦が開催されてきました。中学野球の春季仙台市大会をはじめ、高校野球や社会人野球の試合、また、近年は使用されなくなっていましたが仙台六大学野球連盟などの大学野球の公式戦が行われました。さらに、不定期ではありますが、プロ野球のイースタン・リーグ（二軍）の公式戦も開催されるなど、アマチュアからプロまで幅広いレベルの試合が行われる場となっていました。

閉鎖の経緯

前述の通り、ナイター照明設備は老朽化のため2011年3月末に廃止される予定でした。しかし、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震（東日本大震災）により、球場を含む名取スポーツパーク全体が壊滅的な被害を受け、営業を休止せざるを得ない状況となりました。これにより、ナイター設備の廃止は予定より早く実施されることとなりました。

震災による被害からの復旧作業は思うように進まず、施設の再開の見通しが立たなかったことから、最終的に2012年6月、名取スポーツパーク全体とともに当球場の閉鎖が決定されました。閉鎖から年月が経過した現在も、球場施設そのものは現地に残されていますが、かつての姿を取り戻すための復旧や、跡地をどのように活用するかについての具体的な計画は全く定まっていません。

復旧への動きと売却

閉鎖から2年後の2014年には、当球場の復旧を望む声が上がっていることが宮城県に対し報じられました。この背景には、同年秋に宮城県で開催が予定されていた高校野球の東北地区大会（新人戦）の会場確保の難しさがありました。宮城県内で最大の野球場である楽天koboスタジアム宮城は、プロ野球の東北楽天ゴールデンイーグルスが使用優先権を持つため、アマチュアの大会での使用には制約が生じます。また、楽天koboスタジアム宮城に次ぐ規模を持つ石巻市民球場の使用も検討されましたが、他県から遠征してくるチームが利用する仙台市周辺の宿泊施設からの移動距離が長い点が課題とされました。

こうした状況を踏まえ、仙台市に近く、広大な駐車場を備える名取スポーツパーク内の愛島球場を復旧させて活用することを求める声が上がりました。しかし、施設の改修には多額の費用が必要となることや、宮城県が単独で修繕費を負担することが難しいことなどから、当時、宮城県は球場の復旧に対して否定的な見解を示していました。

その後、2018年には、名取市が名取スポーツパーク全体の敷地および施設を、長野県に本部を置く学校法人である理知の杜へ売却したことが発表されました。

交通アクセス

東日本旅客鉄道（JR東日本）東北本線または仙台空港鉄道の名取駅西口から、タクシーで約10分程度の距離に位置していました。

かつて宮城県のアマチュア野球、時にはプロ野球の舞台としても重要な役割を担った東北電力名取スポーツパーク愛島球場は、東日本大震災という未曽有の災害によりその歴史に幕を閉じました。閉鎖から長い年月が経過しましたが、その跡地は現在も活用されないまま残されています。

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