東宝レコード

東宝レコードの歴史と成り立ち

東宝レコードは、映画製作・配給を手掛ける株式会社東宝によって、1970年に設立されました。最初は音楽事業を専門にした子会社として「東宝芸音」としてスタートしましたが、同年にレーベル名として「東宝レコード」を使用し始め、1973年には企業名も正式に「東宝レコード」と改称されました。英語名は「TOHO Records Co., Ltd.」です。当初の本社とレコーディングスタジオは日比谷の東宝ツインタワービルの7階に位置していました。

設立から間もない1970年10月には、初めての新譜がリリースされ、加茂さくらの楽曲「夢は今も」を含むシングルとLPが発表されました。最初の新譜のリリースされた際の広告は、宝塚歌劇団のオフィシャルマガジン『歌劇』の1970年10月号に掲載されていました。このとき、シングル盤10枚とLP3タイトルが同時に発売されたことが記録されています。この時点で宝塚歌劇団関連のレコードは主に日本コロムビアから発表されていましたが、1971年には東宝レコードが宝塚関連のレコードを「宝塚レコード」としてリリースするようになりました。

活動の展開と特徴

東宝レコードは、映画の主題歌やサウンドトラックのレコードも手掛けており、これには東宝が製作または配給した映画の音楽も含まれました。その中には、東宝および東宝芸能に所属する歌手や俳優が含まれており、専属俳優を起用してレコードデビューさせるスタイルは、東宝独自のものでした。1970年代後半には、商業音楽から外れた作品やカルト歌謡と呼ばれる企画盤も多数リリースされ、そのため「謎のレーベル」とも言われることがありました。

また、当時東宝はフランスのヴォーグ・レーベルとも契約し、マルタン・サーカスやペトゥラ・クラークの日本盤もリリースするなど、国際的な音楽市場にも進出していました。

売上の低下と消滅

しかしながら、1980年に至り、業績の不振から事業の停止を余儀なくされました。『歌劇』1980年7月号には、レコードの廃盤が決定されたことが告知され、1981年には全ての新譜のリリースが中止され、最終的に東宝に吸収合併される形で消滅しました。宝塚関連のレコードについては、CBS・ソニーが事業を引き継ぎ、1982年以降はTMP音楽出版が発売を引き継ぐ結果となりました。現在では、宝塚クリエイティブアーツがその業務を引き継いでいます。

所属アーティストと影響

東宝レコードには、多くの著名なアーティストが所属していました。黒沢年男や酒井和歌子、研ナオコ、松田優作などがその代表例です。特に、研ナオコは1971年にデビューし、1975年にはキャニオンレコードに移籍するまでの間、数多くのヒット曲を出しました。

最後に、東宝レコードの本社があったツインタワービル7階は現在は改装され、東宝ダンスホールとして利用されていましたが、2019年に閉店しています。現在も音楽事業は続いており、2012年に設立されたアニメ事業室が「TOHO animation RECORDS」としてCDをリリースしていますが、旧東宝レコードとの直接的な関係はありません。

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