東寺長者

東寺長者について

東寺長者（とうじちょうじゃ）とは、東寺（教王護国寺）においてその管理者として職務を担い、同時に真言宗の最高位を示す僧侶の呼称です。一般的には長者（ちょうじゃ）とも呼ばれますが、「氏長者」との混同を避けるため「東寺長者」が用いられることが多いです。最初の長者として位置づけられているのは、承和3年（836年）5月に任命された実恵ですが、後の資料では弘法大師空海が初代と見なされることもあります。

長者の歴史と役割

東寺長者は当初1名の定員がありましたが、その後増員され、最終的に安和2年（969年）に定員4名まで拡大しました。これら4名の長者は、特に筆頭の一長者（いちのちょうじゃ）、または一阿闍梨と呼ばれ、仏教界における重要な役割を果たしました。加えて、一長者は律令制度のもとで全仏教界の上首である法務（正法務）も兼任していました。

中世には、東寺座主（とうじざす）という上位の僧職も設立され、鎌倉時代後期に後宇多上皇によって創設されました。この地位は真言密教の最高位を示す意図があったと言われており、最初の座主は禅助で、第2代は道意が務めました。その後、南朝の後醍醐天皇によっても再興され、文観房弘真が3代目座主に任命されましたが、この地位は名誉職としての側面が強いとされています。

歴代の長者とその影響

歴代の東寺長者に関する記録は『東寺長者補任』としてまとめられており、これは非常に重要な史料とされています。この文書には、各長者の任命日や年譜、俗姓、師資などが詳細に記されています。11世紀半ばに仁海によって『仁海僧正自筆長者次第』が書かれたとされ、現存最古と思われる『東寺長者補任』は、第37代長者寛信が20年かけて完成させたもので、1145年に発表されました。

長者の選任は真言宗の僧侶から行われ、後に仁和寺、大覚寺、勧修寺、醍醐寺の僧侶から勅任される慣習が形成されました。これらの寺院の長は多くが貴族出身であり、そのため長者職も貴族に占められることが多いです。

空海の遺告によって実恵が初代長者に任命されたのは、真言宗の基盤を築く重要な出来事となり、空海自らが建設した東寺の管理責任者としての役割は、長者の役割に深く結びついています。特に、延喜19年（919年）には、金剛峯寺座主との兼任によって長者の権威も高まったと伝えられています。

終焉とその影響

江戸時代以降、明治維新により勅任制度は廃止されますが、現在でも東寺真言宗の管長を指す別称として「東寺長者」が使われています。これにより、東寺長者が持つ歴史的な権威は、今日でも一定の影響を持っています。

東寺長者とその職務の歴史は、真言宗の発展と密接に関わっており、宗派にとっての中心的な存在であり続けてきたと言えます。

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