東嶺円慈

東嶺円慈とは

東嶺円慈（とうれい えんじ）は、江戸時代中期に活躍した臨済宗の僧侶です。近世臨済禅中興の祖とされる白隠慧鶴（はくいん えかく）禅師に師事し、その法を継承したことで知られています。白隠の高弟の中でも、特に東嶺円慈と遂翁元盧（すいおう げんろ）の二人は傑出した存在として名を残しています。

生涯

出生から古月禅材の下を去るまで

1721年、東嶺円慈は江州小幡駅出町（現在の滋賀県東近江市五個荘小幡町）で生まれました。父は中村善左衛門といい、薬屋を営んでいました。5歳の時、日向大光寺の古月禅材（こげつ ぜんざい）が江戸へ向かう途中で中村家に立ち寄ったことがきっかけで、東嶺は出家を志すようになります。9歳で能登川大徳寺に入り、亮山和尚のもとで出家、慧端（えたん）という諱を授かります。16歳で自ら道果（どうか）と改名しますが、古月への思いは消えず、翌年には大徳寺を出て古月の下で修行を始めます。しかし、2年後には古月のもとを離れています。その理由は、古月が既に隠居しており高齢であったためとも伝えられています。

白隠禅師との出会いから印可まで

1739年、東嶺は丹波法常寺の大道和尚に参禅し、翌年には大日寺の十洲和尚から理趣分口訣を受けます。法常寺で悟りを開いた後、21歳で江州杉杣蓮華谷にて独接心を行い、大悟します。23歳の時、松蔭寺の白隠慧鶴に初めて会いました。東嶺の優れた資質はすぐに認められ、白隠の侍者となり、白隠が執筆していた『息耕録開演普説』の編集を任されます。その後、東嶺は自身の病気や母親の看病のため、しばしば故郷に戻ります。両親を相次いで亡くす中、1748年には『宗門無尽灯論』を著し、翌1749年、29歳で白隠から印可を受けました。

龍沢寺創建から遷化まで

35歳で花園妙心寺に登り、「東嶺」と号します。白隠から松蔭寺の補席を勧められますが、これを辞退しました。1760年、龍沢寺に入ります。1769年に白隠が亡くなるまで、東嶺は師を支え続けました。白隠の死後、龍沢寺の住職として多忙な日々を送る中、1776年に龍沢寺が火災に見舞われます。東嶺は遂翁元盧らの協力を得て、寺を再建しました。晩年は尾張犬山瑞泉寺や故郷の近江齢仙寺に移り住み、1792年、72歳で生涯を閉じました。

著作

東嶺円慈は、禅の教えを広めるために多くの著作を残しました。

『達磨多羅禅経説通考疎』
『宗門無尽燈論』
『五家参詳要路門』
『神儒仏三法孝経口解』
『自註 父母恩難報経註解』
『碧巌百則弁』
『白隠年譜』
『自註 血盆経』
『自註 般若心経』
『快馬鞭』

これらの著作は、禅の思想を深く理解するための重要な資料となっています。

まとめ

東嶺円慈は、白隠禅師の教えを忠実に守り、その禅風を継承した傑出した僧侶でした。龍沢寺の住職として寺の発展に尽力し、数多くの著作を通じて禅の教えを広めました。その生涯は、禅宗の発展に大きく貢献したと言えるでしょう。

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