東方三博士の礼拝 (ルーベンス、ルーヴル美術館)

東方三博士の礼拝

ピーテル・パウル・ルーベンスの『東方三博士の礼拝』は、バロック期フランドルを代表する巨匠ルーベンスが、1626年から1627年にかけて油彩で描いた壮大な作品です。この絵画は、『新約聖書』の「マタイによる福音書」に記された、東方から来た三博士が幼子イエスを訪れ、贈り物をする場面を主題としています。

作品の背景

もともとこの作品は、ブリュッセルのアノンシアード修道女会教会の主祭壇のために制作されました。しかし、1777年にフランスのルイ16世の手に渡り、その後、パリのルーブル美術館に収蔵されることとなりました。

描かれている場面

画面には、誕生したばかりのイエス・キリストに敬意を表し、贈り物をするために東方からやってきた三人の王（マギ）が描かれています。これらの王は、後にヨーロッパ、アフリカ、アジアの代表と解釈されるようになり、そのため絵画ではしばしば一人が黒人として描かれます。異国情緒と華麗さを兼ね備えたこの主題は、16世紀のヴェネツィア派をはじめ多くの画家たちに好まれました。また、キリスト教の称揚という観点から、対抗宗教改革後のカトリック教会において祭壇画として特に重要視されました。

ルーベンスは生涯にわたりこの主題を繰り返し描いており、本作は画家が50歳前後の時に、聖母マリアに献身するアノンシアード修道女会教会のために制作されました。この作品の依頼主は、ルーベンスが以前に肖像画を描いたブラバント州宰相ピーテル・ペックの未亡人バルバラでした。

聖母マリアが身につけている赤い服は、アノンシアード修道女会の赤い修道服を暗示しています。ルーベンスは伝統的な表現とは異なり、礼拝の場面を荒廃した厩ではなく、宮殿やバロック様式の聖堂を思わせる壮大な建築物の中に設定しました。イエスの慎ましい誕生を想起させるのは、藁の寝台だけです。王たちが持参した高価な贈り物は、金貨の入った器として表現されています。背景には、従者たちがアーチをくぐって入ってくる様子が描かれています。

作品の特徴

ヴェネツィア派の影響を受けた豊かな色彩は、ルーベンスの円熟した作風が頂点に達していることを示しています。特に注目すべきは、調和のとれた茶色、赤色、黄色の色彩が、三人の王の衣服、聖母の頭部、そして幼子イエスの裸体の白さを際立たせ、主要人物たちの役割を強調している点です。

ルーベンスの同主題作

ルーベンスは、この『東方三博士の礼拝』以外にも、同じ主題で複数の作品を制作しています。これらの作品を通じて、ルーベンスのキリスト教への深い信仰と、芸術的な才能を見ることができます。

参考文献

ヴァンサン・ポマレッド監修・解説『ルーヴル美術館 収蔵絵画のすべて』、ディスカヴァー・トゥエンティワン、2011年
坂本満 責任編集『NHKルーブル美術館V バロックの光と影』、日本放送出版協会、1986年
大島力監修『名画で読み解く「聖書」』、世界文化社、2013年

外部リンク

ルーヴル美術館公式サイト、ピーテル・パウル・ルーベンス『東方三博士の礼拝』 (フランス語'>ルーヴル美術館公式サイト、ピーテル・パウル・ルーベンス『東方三博士の礼拝』 (フランス語))

もう一度検索