東方通信社

東方通信社とは

東方通信社は、1938年10月にシンガポールで設立された日本の通信社です。従業員はわずか3名で、小規模な組織でした。同社の主な業務は、マラヤの新聞社やシンガポールなどの在留日本人に対して情報サービスを提供することでした。提供される情報の多くは、日本の同盟[[通信社]]が配信したニュースを基にしていました。

設立の経緯

東方通信社は、1938年10月にシンガポールで活動を開始しました。設立当初の従業員は3名で、そのうちの一人である小林猪四郎は、同盟通信シンガポール支社の社員でもありました。また、篠崎護も同社の社員として活動していました。彼らは、1938年8月から10月頃にかけて、在シンガポール日本総領事館の「嘱託」として公務パスポートを所持してシンガポールに入国しました。

業務内容

東方通信社の主な業務は、マラヤの新聞社に対して無料で情報サービス（Eastern News）を提供することでした。また、シンガポールなど各地の在留日本人にも情報サービスを提供していました。提供されたニュースのほとんどは、同盟[[通信社]]が配信したものでした。

篠崎護の証言によると、彼は編集長として、アメリカ・ポートランド出身の日系二世ウィリアム細川を迎えてシンガポールで創刊された英字新聞『シンガポールヘラルド』に対し、「日本からの新鮮で歪曲されていないニュース」を供給する役割を担っていました。これは、同社の情報発信における重要な側面を示しています。

スパイ容疑と事件

1940年8月4日、東方通信社の活動に大きな転機が訪れます。コックス事件に関連して、主筆の小林猪四郎がシンガポール警察当局に逮捕されました。彼は49日間拘留された後、同年9月21日に釈放されました。

しかし、その同日、東方通信社の従業員であった篠崎護もスパイ容疑で逮捕されました。同年11月に行われた裁判では、篠崎の逮捕前に東方通信社の組織再編計画が存在し、中国語ニュース配信部門の新設が検討されていたことが明らかになりました。裁判の結果、篠崎は有罪判決を受け、3年半の懲役刑となりました。この事件は「篠崎スパイ事件」として知られています。

事件の影響

篠崎の逮捕と有罪判決は、東方通信社の活動に大きな打撃を与えました。この事件は、同社が単なる通信社としてだけでなく、諜報活動に関与していた可能性を示唆するものであり、その後の東南アジアにおける日本の情報活動に影響を与えたと考えられます。

参考文献

Bridges, Brian (1986-1). “Britain and Japanese Espionage in Pre-War Malaya: The Shinozaki Case”. Journal of Contemporary History 21 (1): 23-35.
篠崎, 護 著「篠崎護氏インタヴュー記録」、東京大学教養学部国際関係論研究室 編『インタヴュー記録 Ｄ．日本の軍政』 6巻、東京大学教養学部国際関係論研究室、1981年、169-213頁。
The Straits Times (1940年11月21日). “POLICE EVIDENCE AT SHINOZAKI TRIAL”. The Straits Times: p. 11.
南洋商報 (1940年9月22日). “倭僑小林豬四郎在星被釋”. 南洋商報. 路透社: p. 2.
The Straits Times (1940年9月22日). “Singapore Japanese Released”. The Straits Times: p. 9.
The Straits Times (1940年8月5日). “JAPANESE DETAIINED IN SINGAPORE”. The Straits Times: p. 8.

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