東日本大震災による帰宅困難者とは？意味をやさしく解説

東日本大震災における帰宅困難者

2011年3月11日に発生した東日本大震災は、広範囲にわたり交通機関を麻痺させ、多数の帰宅困難者を生み出しました。特に、東北地方や首都圏では、鉄道やバスなどの公共交通機関が運行を停止し、多くの人々が自宅に帰ることが困難になりました。この状況は、帰宅難民という言葉が新語・流行語大賞に選ばれるほど、社会的な関心を集めることとなりました。

首都圏の状況

内閣府の調査によると、東京都では約352万人、神奈川県で約67万人、千葉県で約52万人、埼玉県で約33万人、茨城県南部を中心に約10万人と、首都圏全体で合計約515万人が帰宅困難者となりました。これは、地震発生時に外出していた人の約28%に相当します。

また、別の調査では、首都圏在住者のうち、震災当日に自宅に帰れた人は8割で、残りの2割は会社などで一夜を明かしたと報告されています。NTTドコモのデータによると、震災後の3月12日午前1時時点では、山手線沿線のターミナル駅を中心に人口が大幅に増加しており、数十万人が都内に留まっていたと推定されています。

震災当日の夜には、東京都で9万人以上、横浜市で1万8千人、川崎市で5千5百人など、多くの人々が地方公共団体が用意した施設を利用しました。

さらに、ウェザーニューズの調査によると、関東地方で電車や車を利用して通勤している人が、震災後に帰宅するのにかかった時間は平均で通常の7倍に達していました。首都圏では、鉄道通勤者の約半数が1時間以上かけて移動しており、平均で70分程度かかるのが通常です。

政府は、鉄道などの復旧が当面見込めないため、無理な帰宅を控えるよう呼びかけましたが、その効果は限定的でした。多くの帰宅困難者が徒歩で帰宅したり、代替交通手段に殺到した結果、各地で大規模な渋滞が発生し、緊急車両の通行を妨げるという問題も発生しました。

鉄道への影響

JRをはじめとする鉄道各社は、東日本大震災の影響で路線が不通となり、通勤者の帰宅手段を奪いました。徒歩での帰宅が困難な人々は、勤務先や駅、公共施設などに開設された避難所で一夜を過ごすことになりました。

しかし、主要ターミナル駅では、営業時間終了後に利用者を外に誘導し、シャッターを閉める対応がとられ、問題視されました。また、運行再開時間が会社や路線によって異なっていたり、帰宅困難者待機場所の確保において鉄道事業者と地方公共団体との連携が不足していた点も課題として残りました。JR 東日本は、この対応について後に謝罪し、対応の変更を発表しました。

首都圏の鉄道会社への影響

JR 東日本
私鉄・地下鉄

道路への影響

鉄道が利用できない状況下で、多くの人々がバスやタクシーを利用しようとしたため、乗り場には長蛇の列ができ、数時間待ちの状態となりました。また、都内では深刻な渋滞が発生し、車の移動速度は徒歩並みでした。首都高速道路が全面封鎖されたことも、渋滞をさらに悪化させる要因となりました。この状況は、震災翌日まで続きました。

教訓

東京都は、震災時の交通混乱を抑制するため、環状7号線の内側を走る車両に対し、大規模な交通規制を定めています。しかし、今回の震災では、渋滞が緊急車両の通行を妨げた例が多数ありました。そのため、東京都と警視庁は、大規模な交通規制訓練を実施し、一般車両の迂回誘導を行いました。

東京都では、震度6弱以上の地震が発生した場合、直ちに車両の全面通行止めなどの厳しい交通規制が行われます。また、企業に対しては、従業員のために3日分の食料や飲料の備蓄を努力義務とする条例が制定されました。さらに、鉄道や集客施設には、利用者の保護に努めることが義務付けられました。

震災後には、台風や低気圧による交通機関の停止が発生し、管理者と利用者の双方に対応の変化が見られました。また、南関東直下地震や関東地震などの発生時には、建物被害や落下物、液状化、津波による浸水などの被害がより顕著になる可能性があり、事前の対策が不可欠です。

その他の地域への影響

東北地方の太平洋側では、鉄道や高速道路が完全に麻痺し、多くの帰宅困難者が発生しました。紀伊半島では、地震被害は少なかったものの、津波警報の発令によって鉄道や道路が不通になり、帰宅困難者が発生しました。

また、航空便を利用して首都圏に来ていた人々も、震災の影響で予定日に帰宅できず、首都圏に留まることを余儀なくされました。

東日本大震災による帰宅困難者