東日本大震災に対する自衛隊の対応

東日本大震災における自衛隊の活動

2011年3月11日に発生した東日本大震災は、戦後日本最大級の自然災害であり、地震と津波によって甚大な被害をもたらしました。この未曾有の危機に対し、自衛隊は災害派遣という形で、その総力を挙げて人命救助、生活支援、復旧活動に尽力しました。本稿では、その詳細な活動内容を時系列に沿って解説します。

発災直後から、自衛隊は情報収集を開始し、被災状況の把握に努めました。各自治体からの災害派遣要請を受け、迅速に部隊を展開、救助活動を開始しました。最大時には約10万人の隊員が投入され、初の即応予備自衛官と予備自衛官の招集も行われました。自衛隊の災害派遣活動は、同年8月31日に終了しましたが、原子力[[災害派遣]]は12月26日まで継続されました。人命救助は19,286名に達し、その活動は多岐に渡りました。

初動対応

地震発生直後の3月11日14時50分、防衛省に災害対策本部が設置されました。偵察部隊が被災状況の確認に飛び立ち、各基地や駐屯地ではヘリコプターや戦闘機が相次いで離陸しました。出動した部隊は、直ちに救助活動を開始し、各駐屯地や基地では避難者の受け入れも行われました。被災した各県知事からの派遣要請を受け、自衛隊は各自治体に連絡幹部を派遣し、連携を取りながら活動を開始しました。

部隊展開

陸上自衛隊

被災地所在の部隊は発災直後から救助活動を開始し、その後、他地域からも増援部隊が投入されました。陸路や空路での移動に加え、一部部隊は民間フェリーを活用して東北地方へ移動しました。アメリカ海軍の揚陸艦も海上輸送に協力しました。

海上自衛隊

横須賀地方隊は、災害派遣計画を発動し、艦艇や航空機を派遣しました。護衛艦「たかなみ」は緊急出港し、石巻港沖で捜索活動を行い、陸上部隊が幼稚園の救助にあたりました。海上自衛隊は艦艇を複数の部隊に編成し、三陸沖や宮城県沖などで活動しました。

人員・部隊の増強と統合任務部隊

被害状況の拡大に伴い、派遣人員と装備が増強されました。当初約8,400人だった派遣規模は、最終的には約10万人にまで拡大しました。2011年3月14日には、陸上自衛隊の東北方面総監を指揮官とする統合任務部隊が編成され、陸海空の自衛隊部隊が一体となって活動しました。これにより、各部隊の連携が強化され、より効率的な活動が可能となりました。

災害派遣からの撤収

救援活動の進捗に伴い、各県からの撤収要請を受けて順次部隊は撤収しました。岩手県、宮城県では感謝式典が行われ、自衛隊の活動を労いました。大規模震災災害派遣命令は8月31日、原子力[[災害派遣]]は12月26日に終了しました。

災害への備え

東日本大震災発生以前から、自衛隊は津波災害を想定した訓練を行っていました。2008年には大規模な防災訓練「みちのくALERT2008」を実施しており、その経験が今回の活動に生かされました。また、首都圏直下地震を想定した災害派遣計画も、今回の10万人体制構築に役立ちました。

他国軍との共同活動

東日本大震災の救援活動には、アメリカ軍やオーストラリア軍も参加しました。アメリカ軍は「トモダチ作戦」、オーストラリア軍は「パシフィック・アシスト作戦」を展開し、自衛隊と連携して救助活動や物資輸送を行いました。日米共同調整所が設置され、活動の連携が円滑に進められました。

自衛隊の被害

今回の震災では、自衛隊施設も大きな被害を受けました。特に、航空自衛隊松島基地は津波により冠水し、多くの航空機が水没しました。また、陸上自衛隊の駐屯地も冠水し、車両が被害を受けました。人的被害も発生し、3名の自衛隊員が殉職しました。

復旧活動

松島基地は早期に滑走路が復旧し、救援機の受け入れを開始しました。水没したF-2B戦闘機は、一部は廃棄されましたが、多くは修理され、再配備されました。

メンタルヘルス対策

長期にわたる派遣活動や遺体収容などの過酷な任務により、自衛隊員のメンタルヘルス問題も深刻化しました。組織的なメンタルヘルス対策として、任務解除ミーティングの実施や、隊員の休息を目的とした戦力回復センターの設置などが行われました。

主な活動内容

捜索・救難

発災当初から、積極的に捜索・救難活動を実施し、19,286名の人命を救助しました。陸上のみならず、海上でも捜索が行われ、遺体収容数は9,505体に達しました。

道路啓開と橋梁架設

通行不能となった道路の啓開や仮設橋の架設を行い、被災地の交通網の回復に貢献しました。

輸送・補給支援

医療チームや救援隊の輸送、救援物資の輸送支援を実施しました。統合幕僚監部が輸送統制を行い、効率的な物資輸送を実現しました。

生活支援活動

給水、給食、入浴支援など、被災者の生活を支えるための活動を行いました。また、犠牲者の仮埋葬も行われました。音楽隊は被災地で慰問演奏を実施し、被災者を勇気づけました。

人員と後方支援体制

規模

最大時には10.7万人の隊員が投入されました。これは、当時の自衛隊の現員数の約半数にあたります。

予備自衛官

初めて即応予備自衛官と予備自衛官の招集が行われ、捜索・救難任務や後方支援活動に従事しました。

後方支援体制

部隊の展開に合わせて、兵站支援体制も構築されました。駐屯地内には託児所が設置され、派遣隊員の児童を預かりました。

評価

自衛隊の東日本大震災における救援活動は、国民から非常に高い評価を受けました。内閣府の世論調査では、災害派遣活動を評価する人が97.7％に達し、自衛隊に対する好感度も過去最高を記録しました。

脚注

出典

防衛省の資料等に基づき作成

外部リンク

東日本大震災における自衛隊の対応 - 防衛省
東日本大震災への対応 - 防衛省
平成23年版　まんがで読む防衛白書　東日本大震災における自衛隊の災害派遣活動 - 防衛省
平成２３年（２０１１年）東北地方太平洋沖地震緊急災害対策本部 - 内閣府

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