東日本大震災後の仮設住宅

2011年3月11日に発生した東日本大震災は、甚大な被害をもたらし、多くの人々が住む場所を失いました。この未曾有の災害に対し、被災者の生活を支えるため、仮設住宅が迅速に建設されました。

東日本大震災では、40万戸を超える家屋が全壊・半壊するという広範囲にわたる被害が発生しました。特に、リアス式海岸の地形を持つ地域では、平地が少なく、仮設住宅の建設用地確保が大きな課題となりました。そのため、公有地だけでなく民有地も活用され、さらに不足を補うため、民間の賃貸住宅を借り上げて提供する「みなし仮設」という形式も多く用いられました。

過去の災害での教訓を踏まえ、今回の仮設住宅では、トレーラーハウスやコンテナハウス、木造の仮設住宅も建設されました。家賃は無料でしたが、光熱費や水道料金は入居者の負担となりました。入居期限は原則2年でしたが、復興の遅れから3年に延長され、その後も自治体の判断で延長されるケースが多く見られました。

初動の対応

発災翌日の3月12日には、福島県が最初の仮設住宅要請を行い、続いて岩手県、宮城県も要請をしました。国土交通省は当初、2ヶ月以内に3万戸の設置を目指しましたが、資材不足やトラック不足で遅れが生じました。5月31日には、竣工戸数が2万7200戸と、目標に届かない状況でした。

各県の状況

岩手県

岩手県では、発災から約5ヶ月ですべての仮設住宅が完成し、避難所が解消されました。陸前高田市では、最も早く仮設住宅が完成し、入居希望者が殺到しました。住田町では、地元の木材を使った木造仮設住宅を独自に建設し、その成功事例が国を動かすきっかけとなりました。大船渡市では、仮設住宅の不足から、住民の不安の声が上がりました。

宮城県

宮城県では、余震の影響で仮設住宅の設置が中断されるなどの困難がありました。気仙沼市大島では、アメリカ製のトレーラーハウスが仮設住宅の代替として活用されました。山元町では、町独自に仮設住宅を発注しました。仙台市では、みなし仮設住宅の需要が高く、建設型の仮設住宅の計画が縮小されました。女川町では、平地が少ないため、コンテナハウスを積み上げた3階建ての仮設集合住宅が建設されました。

福島県

福島県では、郡山市で富岡町と川内村の避難者向けに仮設住宅が建設され、二本松市ではログハウスの仮設住宅が建てられました。

千葉県

千葉県旭市では、住宅の全半壊被害を受け、仮設住宅が建設され、被災者の入居が進みました。

さまざまな支援

日本赤十字社は、海外からの義援金で仮設住宅入居者へ家電製品を寄贈しました。大東建託は、仮設住宅の建設や復興に必要な住宅の提供を行いました。三井物産は、社有林を伐採して建材を提供しました。また、エルピーガス協会は、仮設住宅入居者のLPガス料金を割引しました。

みなし仮設

「みなし仮設」とは、民間賃貸住宅を借り上げて、仮設住宅と見なす制度です。東日本大震災を契機として本格的に導入されました。既存の物件を利用するためすぐに入居でき、プレハブ型よりも快適な居住環境を提供できるという利点があります。しかし、都市部への人口流出、自治体の事務負担の増加、入居者への生活支援の難しさ、地域コミュニティへの溶け込みにくさなどの課題も抱えています。

コミュニティーケア型仮設住宅

岩手県釜石市では、東京大学と連携し、介護拠点や託児所を併設した「コミュニティーケア型仮設住宅」を建設し、高齢者の孤立防止や地域交流を促進しました。

仮設住宅の解消

仮設住宅は、入居者の自宅再建や災害公営住宅への入居に伴い、解消が進みました。2018年3月から2021年3月にかけて多くの市町村で解消されました。しかし、福島県大熊町と双葉町では、原発事故の影響で解消が遅れ、2026年3月31日まで供与が延長されました。

問題点

仮設住宅は、過去の教訓を踏まえて改善されてきましたが、プレハブ型では「音が響きやすい」「夏は暑く冬は寒い」「結露によるカビ」などの問題が残りました。また、設置場所が不便なケースや、入居者の交流不足、入居期限の延長問題なども発生しました。

仮設住宅の展示

震災遺構として保存されている宮城県石巻市の旧門脇小学校では、プレハブ型仮設住宅が移設展示され、内部を見学できます。また、岩手県陸前高田市には、仮設住宅を体験できる「3.11仮設住宅体験館」があります。

東日本大震災後の仮設住宅