東武デハ10系電車

東武デハ10系電車の歴史と特徴

東武デハ10系電車は、かつて東武鉄道で運用されていた特急形電車の一群で、1935年から1942年にかけて新製されました。本系列はデハ10形・クハ10形、デハ11形・クハ11形、デハ12形・クハ12形、そしてクハ1201形を含む多様な形式から構成されています。

概要

1930年代初頭、日本の鉄道は全線電化と新線開通の進展により、輸送力の向上が求められていました。この時期、特急列車の運行には専用の新型車両が必要とされ、本系列が誕生しました。当初の車両は日本車輌製造や汽車製造によって製造され、従来の客車が電車に置き換えられる中で登場しました。

車体デザイン

デハ10系電車は、浅めの屋根と大きな窓を持つ流線型のデザインが特徴的でした。特に両側貫通構造の前面が軽快な印象を与え、いくつかのデザイン要素が昭和2年から4年製造の車両と似ていますが、より洗練されたスタイルを追求しました。車体寸法は最大で18,352mmの長さを誇り、全車両にトイレが設置されていました。

車内の仕様

デハ型車両の車内には特急用のクロスシートが装備されており、クハは全席がクロスシートで統一されていました。豪華な八角形グローブのシャンデリア型室内灯が設置され、一部には沿線案内図も見られました。特急列車らしい快適な車内空間は、多くの乗客に優れた移動体験を提供しました。

機械設備

電車には大きな国産部品が多数採用されており、制御器は電動カム軸式、主電動機は日立製作所のものが主に使用されました。これにより、主電動機の出力が110kWに増強されて、以降の標準仕様となりました。

各形式の詳細

本系列は、デハ10形からデハ12形、クハ1201形まで、異なる仕様や年式で作られた5つの主要形式から構成されています。各形式の特徴ごとの詳細は以下の通りです。

デハ10形・クハ10形

1935年に新製されたこのグループは、全車デハ1101から1103、クハ1101から1103の6両から成り、当初は赤茶色の塗装が施されていました。戦後に一部が戦災を受けたため、改気番号が赤く塗られ、デハ1103はモハ5460形に改称されました。

デハ11形・クハ11形

1937年に増備されたこのグループでは、車体色がチョコレート色に変更され、内部の仕様も変更が加えられました。デハとクハともに構成が似ていましたが、ボギー間隔が拡大されるなどの仕様変更も見られました。

デハ12形・クハ12形

このグループは1939年から1940年に製造され、特に特殊字体の切り文字表記が廃止されました。

デハ1201形・クハ1201形

1942年に新製されたデハ1201形は、戦争が激化する中、車内設計が簡素化され、ロングシート仕様に改められました。

戦後の運用

特急列車の運行が1948年に満を持して復活し、この系列も再び活用されることとなりました。大改番と共に、モハ5310形やクハ350形に改称されたり、電動車化改造が施されたりするなど、様々な変遷を経験しました。

終焉とその後

1970年代には既存の新型車両に置き換えられ、デハ10系は老朽化が進行。その結果、1975年に全車両の運用が終了しました。旧車体の一部は解体される中、モハ5451の車体を再利用した試験用車両も登場しました。これにより、東武デハ10系の長い歴史が幕を閉じました。

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