東武1720系電車

東武1720系電車の概要

東武1720系電車は、1960年から1991年まで東武鉄道で使用されていた特急形車両で、通称「デラックスロマンスカー（DRC）」と呼ばれています。この車両は、特に外国人観光客を意識して設計されており、国鉄151系電車への対抗手段として開発されました。日光方面を訪れる旅行者の需要に応えるため、高速性と快適性を兼ね備えた設計が施されていたのが特徴です。

開発の背景

1956年に運用を開始した1700系電車によって、東武鉄道は東京と日光間の特急運行で国鉄と競争し、優位性を確保していました。しかし、国鉄が新型車両を導入する動きが見られたため、これに対抗する新たな特急車両の開発が急務となりました。
1720系は、居住性や加減速力が優れており、現代の高性能車両に引けを取らない設計がなされています。全体の形状や構造は、斬新で美しいデザインが求められ、電気装置や走行装置も高性能であることが重視されました。

車両仕様

1720系は全電動車方式で構成される6両固定編成で、各車両にはそれぞれ番号が付けられます。車体は長さ20メートルを超え、当時の国鉄特急形一等車と同様に、3段ロック式のリクライニングシートが設けられ、広々としたシートピッチが確保されています。また、片方には自動ドアも備わり、快適な乗車環境を提供しました。

外観

車両の外観は、国鉄の151系電車に似たノーズ形状を持ち、左右には灯火類が設けられています。塗装は、ロイヤルマルーンとロイヤルベージュのツートンカラーで、国鉄特急形に準じたデザインが採用されています。

機器類と性能

1720系の主電動機は、東洋電機製造製の直巻電動機で、中速から高速域の性能を向上させています。最高運転速度は110 km/hに設定されており、平坦線での釣合速度は165 km/hに達します。ブレーキ装置には発電ブレーキが併用されており、衝突安全性も高められています。

改造と運用

1720系は、長期にわたる運用の途中で数回の改造を受けています。安全基準の変化に合わせ、ATSや自動ドアの導入、トイレの改良などが行われました。また、1980年代後半には古さが指摘されることもありましたが、改良を経て運用は続けられました。

運用の終焉

1990年には、後継車両である100系「スペーシア」の運行が始まり、1720系は次第にその役割を終えていきました。1991年8月までに全編成が運用を終了し、最後の運転は「さよなら運転」として行われました。ただし、車両の一部はその後200型として改装され、引き続き使用されています。

保存状況

1720系の一部は静態保存されています。東京都墨田区の東武博物館や、他の施設において展示されており、当時の性能やデザインを体験することが可能です。これにより、この優れた特急形電車の歴史を後世に伝える役割を果たしています。

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