東江 (中国)

東江：広東省を潤す大動脈、そして未来への課題

中国南部、華南地方を流れる東江は、珠江という巨大な水系の主要な支流を成す大河です。広東省東部の経済、生活に欠かせない存在であり、その歴史と現状、そして未来に潜む課題について見ていきましょう。

東江の地理：源流から珠江河口へ

東江は江西省南部と広東省北部を源流とし、複数の河川が合流して形成されます。その中心となるのは尋烏水で、江西省贛州市尋烏県の山々から流れ出し、広東省河源市で定南水と合流し、東江と名付けられます。

その後、梅州市、河源市、恵州市、東莞市と広東省東部を流れ、最終的に珠江に合流します。全長は約523キロメートル、流域面積は珠江全体の6.3%を占める広大なものです。流域には客家文化圏が広がり、人々の生活と深く結びついています。

東莞市石龍鎮では、東江は北分流と南分流に分かれます。北分流はさらに他の水系と合流し、南分流は多くの支流に分かれて三角州を形成し、いずれも珠江へと注ぎ込みます。主な支流として、新豊江、秋香江、増江などが挙げられます。

東江の利用：香港の水道水と内陸水運

東江は河源市以南では航行可能であり、古くから内陸水運の重要な役割を果たしてきました。しかし、東江の最も重要な役割は、香港の生活用水供給です。

1959年から1960年にかけて、広東省は東深供水工程（東江-深圳供水工程）を建設しました。これは、東莞市から深圳市に導水管を建設し、深圳地域の水不足問題を解決するための巨大プロジェクトでした。

この東深供水工程は、香港にも恩恵をもたらしました。水不足に悩む香港は、広東省と交渉し、1965年に東江からの導水路を完成させました。以来、香港は多額の費用を支払って東江の水を買い続けており、現在でも香港の水道水の70％以上を東江に依存しています。

東江の課題：水質汚染と水源枯渇

東江は、広東省の経済発展を支える一方で、深刻な課題にも直面しています。急速な工業化による生活排水や工場排水は、東江の水質汚染を引き起こしており、香港への水供給にも影響を与える可能性があります。

さらに、東江源流域における森林伐採や開発は、水量減少や水質悪化につながる懸念があります。これらの問題への対策は、広東省だけでなく、香港を含む関係各国の協力が不可欠です。東江の未来を守るため、持続可能な水資源管理が喫緊の課題となっています。

東江は、広東省、そして香港の生活と経済を支える重要な水資源です。その恵みを受けながら、私たちは未来世代のために、その保全に真剣に取り組んでいかなければなりません。

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